EAPの現場から ~人事担当者のお悩み相談~第2回:セルフケア研修とは?

他の記事を見る

『人事マネジメント』2012年1月号

第1回目は当社で最もご依頼件数の多いラインケア研修についてお話しました。今回は一般従業員向けのメンタルヘルス研修である,セルフケア研修についてお伝えします。

セルフケア研修への意識啓発に役立つトピック

『管理者層はメンタルヘルス問題への関心が高く,受講に対するモチベーションも高いのですが,ストレスマネジメントについて考える一般従業員向けのセルフケア研修ではモチベーションにばらつきがあります。興味を持って受講してもらうにはどのようなことが考えられるでしょうか』

B社は中規模のIT企業です。メンタルヘルスに関するトラブルが数年前から増えてきており,同時に電話相談窓口開設等,対策も進めてきましたが,利用は今ひとつ伸びません。前年度にラインケア研修を実施,今年度は一般従業員向けのストレスマネジメント研修を実施し,窓口利用を含めた意識啓発をしたいという狙いがあるとうかがいました。
一般的なメンタルヘルスのセルフケア研修プログラムでは,①ストレスモデルの解説,②心の病の基礎知識,③ストレスマネジメント,の3つをご提案することが多くなっています。ただし,それだけでは概論に終始してしまうため,受講された方々は飽きてしまうかもしれません。現実感を持っていただくために分かりやすい例でご紹介したり,具体的に考えて取り組めるワークを取り入れたり,時間に合わせてプログラムを設計してご提案していくこととなります。
以下,実際にお話していることから興味を持っていただけそうなトピックを簡単にご紹介します。

ストレスって何ですか?

ストレスという言葉はもはや日常語ですが,元は工学・物理学用語です。何らかの刺激によって生じた歪みの状態を意味しています。ボールを押しつぶした絵で紹介されることが多いです。それを医学・生理学用語にしたのはハンス・セリエというカナダの生理学者です。
「ストレス」と聞いてイメージすることは何でしょう? ある人は苦手なあの人を思い浮かべるかもしれないし,または胃の痛みや肩こりをイメージする人もいるかもしれません。「ストレス」という言葉には,刺激(原因)である「ストレッサー」と,結果(反応)である「ストレス反応・症状」の両方の意味で使われることが多いのです。先の苦手な人はストレッサー,胃の痛みはストレス反応,と分類することができます。
また,「ストレッサー」は「環境変化による刺激」と言い換えることができます。その意味で捉えれば,私たちにはストレッサーがあるのが当たり前,ストレッサーから逃れることはできません。仮にストレッサーがないということは,全く刺激がない状態です。その状態が長く続けばそれがストレッサーとなってしまうのです。ストレス(ストレッサー)はあるのが当たり前ならば,いかに付き合うか,いかにマネジメントするかが大切と言えるでしょう。

なぜうつ病になってしまうと思いますか?

受講者の皆さんに問いかけると,「対人関係?」「ストレス?」等々,様々なご意見をいただきます。現在の有力な説では,「脳の病気」「脳内神経伝達物質の分泌異常」が原因で,様々な精神症状,身体症状が起こるといわれています。確かに,私たちは対人関係や特定の出来事がストレッサーとなって調子を崩してしまうことがあります。だからストレスマネジメントが大切なのですが,一方でそれを解決したとしても,神経伝達物質の流れが改善されなければ回復は難しいでしょう。うつ病は“神経伝達物質の流れが改善されれば治る病”といわれています。

ストレスをマネジメントするには?

私たちはストレスマネジメント研修をする際,その対処法について,①ストレスの原因をなくす・少なくする,②自分の受け止め方を変える,③ストレスを発散する,④周囲の助けを借りる,という4つの方法に分類してお話しています。そのなかの「②自分の受け止め方を変える」の一つとして原因帰属理論というものをご紹介します。
ワイナー(Weiner.B.1985)は,帰属理論の観点から,成功と失敗の帰属(原因を何に求めるか)が,次の課題への成功・失敗の期待感や,感情を決定し,その後の達成行動に影響するとしています。難しい表現なので,ここではゴルフのバンカーショットにたとえて説明します。題して「心理学的にバンカーショットがうまくなる方法」です。ゴルフをなさらない方もぜひお付き合いください。
あなたはゴルフをしています。あるホールの2打目がバンカーに入ってしまいました。こんなとき,あなたならどう考えますか?
A『これまでバンカーショットは練習してきた。きっとうまくいく。思い切って狙ってみよう』
B『出せるかな? まぐれが起きないかな,ええい,打ってみよう』
実際に,打ってみると見事に脱出,グリーンをとらえ,バーディを取ることができました。ストレス場面ではありましたが,その場は最高のショットで切り抜けることができました。
さて,そのとき,うまく切り抜けられた原因を何と考える(どこに原因帰属させる)でしょうか? 打つ前の心理状態としてAとB両方の考え方を挙げました。今回の結果は同じだったとしても,成功の原因をどちらに帰属させるかで,その後の行動が変わります。
Aだった場合,その後のホールでバンカーにつかまったときも果敢にグリーンを狙うでしょう。その結果,失敗したとしてもまた挑戦・練習するのではないでしょうか。その後も,良いイメージを持ったまま数を打つことになるので本当に技術が身につき,打てるようになります。
対してBだった場合,“さっきのはまぐれだった”と帰属させてしまったわけですから,次にバンカーにつかまったときは安全策を取り,一度外に出すという選択をするかもしれません。結果,数を打つ機会は生まれにくく,本当にまぐれで終わってしまいます。
結局「練習すればできるようになる」というごく当たり前の結論です。しかし,考え方,つまり自分の受け止め方次第で,その後の感情,行動は変わってきます。これは他の場面でもあてはめることができます。例えば何かのテストに失敗してしまったら……,例えば業務上でうまくいかないことが起こってしまったら……,あなたはどこに原因を帰属させますか? あなたの選択次第,受け止め方次第でその後の感情や行動が変わる可能性大なのです。

病気の知識とストレスマネジメントの両輪で

B社の受講者の皆さんは,メンタルヘルスの知識,特に心の病についての基礎知識はお持ちの方が多いようでした。しかし,病気についての知識はあってもストレスマネジメントについてはあまり考える機会がなかったようです。「全く聞いたことのない話ではなかったが,改めて考える機会になった」「既に持っている知識の整理に役立った」という声をちょうだいしました。また,グループワークで意見交換をし,専門家を含め,周囲の助けを借りることに対する敷居も下がったようです。

次回は総合的にメンタルヘルス対策をするには,というテーマで,EAP体制構築の基本的な考え方についてお話しします。ぜひご期待ください。

大谷 裕(おおたにゆたか)
(株)保健同人社 EAPグループ・臨床心理士・シニア産業カウンセラー。大学卒業後,スポーツメーカーに10年間勤務。退職後,大学院で心理学を学び修士号を取得し,現職。EAPコンサルタントとして,企業の「人財」を活かすための支援に従事。研修開発・講師としても全国で活動中。

(月刊『人事マネジメント』2012年1月号より)

弊社EAPコンサルタントによるセミナー・研修についてはこちら

保健同人社のメンタルヘルス研修

専門職スタッフが、エビデンスに基づいた多彩なプログラムをご提供します!

メンタルヘルス研修の詳細はこちら

資料請求・お問い合せ Tel.03-3234-8005

保健同人社の上記サービスに関する資料請求・ご相談など、お気軽にお問い合せください。
※なお、当該サービスは企業・団体向けのサービスとなっております。

お問い合せ

保健同人社の上記サービスに関するご質問・ご相談など、お気軽にお問い合せください。
※フォームは30秒で入力できます。

ページのトップへ

関連サービス
  • EAP
    従業員のこころとからだの健康をトータルで支え、よりよい職場づくりをサポートします
  • MOSIMO
    メンタルヘルス不調者が長期休職したときの企業のコストを試算するこができるツールです

ページのトップへ