EAPの現場から ~人事担当者のお悩み相談~第6回:休職・復職支援の基本を理解する

他の記事を見る

『人事マネジメント』2012年5月号

休職・復職に関するご相談は,年々増えています。皆様の会社でも対応に苦慮されたことはないでしょうか。今回は休職・復職に関する失敗例,成功例をご紹介したいと思います。

事例1 「本人が受診したがらないのだが…」

「メンタル不調が疑われる従業員がいます。受診,その結果によっては休職を勧めたいのですが,本人は嫌がって受診してくれません」―A社の人事担当者からこのようなご相談をお受けしました。「会社としては確かに受診を勧めたので,あとは本人の問題」と簡単に割り切れるものではありません。その後,自殺や事故で命に関わるような事態に至ったとき,会社は体調不良を知っていたわけですから,「『受診を勧めてはいたが本人が応じなかった』では,安全配慮義務を果たしたことにな らない」と指摘される可能性があるからです。
まず現状を確認する必要があります。なぜメンタル不調が疑われるのか? 業務パフォーマンスが落ちているのか,言動がおかしいのか,勤怠に変化が出ているのか,何かおかしいと感じているわけですから,それが何かをもう少し具体化する必要があります。
メンタル不調ではなく身体疾患である可能性もあります。また,受診を勧める際はメンタル不調を前提に話をしないほうが良いといわれています。「メンタル不調だから精神科へ行きなさい」という言い方では,抵抗感を持たれるでしょう。本人の話を聞くと,眠れない,食欲がない,頭痛がする,など何らかの身体症状が出ていることがあります。そうした場合は身体症状に焦点を当て,受診を勧めると本人も受け入れやすくなります。例えば,「眠れない日が続いていると日中ボーっとするし,業務にも支障があるでしょう。まずは睡眠状況を改善したほうがいいと思います。かかりつけの病院はありますか? 一度診てもらったほうがいいと思いますがいかがですか?」という具合です。
この場合は精神科ではなく内科に受診ということになります。それでもまずは専門家につなぐことが大切です。内科で所見がなければ他科を紹介してもらうこともできます。「何となく調子が悪そう」ではなく,「こういう理由で調子が悪いように見えるから受診を」と表現すると伝わりやすいと思います。本人も自覚していないことがあります。
その後,実際に受診し,医師から休職を要するという診断書が出たら,休職の手続きを取ることになります。その際は休職期間,休職中の連絡先,連絡の方法・頻度,傷病手当等の手続き,会社の窓口となる担当者を決め,伝えておく必要があります。

事例2 「休職中に連絡するタイミングが難しくて…」

B社にも不調者が出ました。体調不良の前は明るく優秀な若手だったそうですが,周囲が声をかけそびれているうちに何日か欠勤が続き,その後に診断書が郵送されてきて,そのまま2ヵ月の休職に入ったそうです。診断書の休職期限が切れる直前には新たに診断書が郵送され,さらに2ヵ月の延長となりました。その間,会社は療養に専念してもらおうと連絡を控えていました。人事担当者としては近況を知りたいと思うこともあったそうですが,どうやって連絡を取るのが本人にとって負担が少 ないのかが分からずに時間が経過してしまいました。結局このケースでは半年間連絡を取らないまま,従業員は退職することになりました。会社から何か対処があっても復職できなかったのかもしれませんが,最初の取り決めを怠ったことで連絡が取りづらくなり,結局何もしなかったことに人事担当者は悔いが残るとおっしゃっていました。
こうした事例は複数見聞します。“ダメならまた採用すればいい”とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが,採用・教育にはコストがかかります。メンタル不調の方が増えている現状を考えても適切に対処し,心身共に健康で働ける職場作りを考える時期にあると思います。

事例3 「復職者をどのように受け入れたらいいか…」

C社では休職者に対しての連絡方法等の取り決めを行い,実行してきました。ある従業員が数ヵ月間の休職の後,主治医による「復職可」の診断書を提出してきて,復職を検討する時期になりました。「さて,どのような手順で復職を判断し,どのような段階を経て業務に復帰してもらうのが適切でしょうか」とのご相談です。
「復職可」という診断書が出るとそのまま復職させてしまう企業がありますが,注意が必要です。「今,復職できないと期間満了で退職となってしまう。それでは生活ができないから」と患者に訴えられ,まだ万全とまではいえなくても主治医が「復職可」とする診断書を作成してしまうことはあるからです。また,日常生活ができることと業務ができることはイコールではありません。復職判断をするのは主治医ではなく企業です。主治医や産業医の意見は判断のための材料と考え,上司,人事担当者,産業保健スタッフ等が復職判定委員会を組織し,診断書と本人との面談結果等を考慮し,復職を検討するのが望ましい姿といえます。
復職先の原則は元の職場です。しばらく休んだ後の復帰は精神的にも負担が大きく,勝手の分かっている仕事,気心の知れた同僚のいる職場に復帰させるのがよいと考えられます。ただし,ハラスメントや職場の人間関係が体調不良の大きな原因だった場合はこの限りではありません。本人との相談が必要です。
C社の事例では,会社としては復職OKの判断はしたものの,現場の受け入れ体制に不安が残ること,最初にどんな業務をしてもらうかの判断に迷っているとのことだったので,EAPコンサルタントが支援をしました。①本人への面談による現状アセスメント,②アセスメント結果を管理者・人事担当者と共有し,復職後の業務をプログラム化,③復職先メンバーへの心理教育,この3つを実施しました。
①では本人の心身の健康状態,服薬状況について,不安に思っていることなどをヒアリングし,必要に応じてアドバイスしました。②では本人の了解を得て,内容を関係者と共有しました。復職先は地方の営業所で,日中は全員が出払っている状況でしたので,事務業務から開始するとして,その具体的業務内容と,定期的な上司面談の取り決めを行いました。③ではメンバーに率直な疑問をうかがい,どんな協力ができるかについて話し合いました。一例をご紹介すると,「調子が悪いときってどんな感じなのか聞いてもいいのですか?」という質問がありました。そこで,「皆さんはどう思われますか? 聞いても大丈夫な方もいるし,聞かれたくない方もいると思いませんか? ですから,まず聞いてもいいかを聞いてみたらいかがですか」とお伝えしました。
復職関連の各種ガイドにはよく「腫れ物に触るような対応をしないこと」と記述されています。しかし,腫れ物に触るように対応しようとする方はいないのです。「そっとしておこう」「困っているようだったら声をかけよう」と周囲の見守る姿勢が過剰になると,本人には「腫れ物に触るように扱われている」と感じられてしまうのです。基本的な挨拶や声かけが大 切であることは,普段の業務のなかでも,不調者に早めに気づいて対応する上でも,復職される方を受け入れる場合でも,同じだということです。

次回はハラスメント問題についてお話します。ご期待ください。

大谷 裕(おおたにゆたか)
(株)保健同人社 EAPグループ・臨床心理士・シニア産業カウンセラー。大学卒業後,スポーツメーカーに10年間勤務。退職後,大学院で心理学を学び修士号を取得し,現職。EAPコンサルタントとして,企業の「人財」を活かすための支援に従事。研修開発・講師としても全国で活動中。

(月刊『人事マネジメント』2012年5月号より)

弊社EAPコンサルタントによるセミナー・研修についてはこちら

保健同人社の復職支援サービス

保健同人社の「復職支援サービス」では、休復職過程のフェーズによるポイントを抑えながら、実際の社内リソースに沿った休復職者対応方針のご提案などを行い、スムースな休・復職対応をサポートいたします。

復職支援サービスの詳細はこちら

資料請求・お問い合せ Tel.03-3234-8005

保健同人社の上記サービスに関する資料請求・ご相談など、お気軽にお問い合せください。
※なお、当該サービスは企業・団体向けのサービスとなっております。

お問い合せ

保健同人社の上記サービスに関するご質問・ご相談など、お気軽にお問い合せください。
※フォームは30秒で入力できます。

ページのトップへ

関連サービス
  • EAP
    従業員のこころとからだの健康をトータルで支え、よりよい職場づくりをサポートします
  • MOSIMO
    メンタルヘルス不調者が長期休職したときの企業のコストを試算するこができるツールです

ページのトップへ