EAPの現場から ~人事担当者のお悩み相談~第9回:健康診断を活用したリスク管理

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『人事マネジメント』2012年8月号

企業組織では,毎年必ず定期健康診断を実施しているはずですが,全員に通達を出し受けるよう周知しても,受診しない方がどの企業にも何人かいらっしゃいます。定期健診は事業者の義務であり,健診結果に基づく健康リスクの管理もEAPの一環と位置づけられることをご存知でしょうか? 
今回はそんな健診結果を活用した健康リスク管理のヒントをご紹介します。

定期健康診断は実施も受診も義務

そもそも定期健康診断は法律に基づいて実施されています。昭和47年に,“職場における労働者の安全と健康を確保すること”“快適な職場環境づくりを促進すること”を目的とする「労働安全衛生法」「労働安全衛生規則」が定められました。そのなかに,「事業者は1年以内ごとに1回,医師による健康診断を行わなければならない」と明記されています。また,「労働者は事業者が行う健康診断を受けなければならない」とされています。つまり,会社には定期健診の実施が,従業員には定期健 診の受診が,法律により義務づけられているということです。
健診を実施すること,受けること共にコンプライアンス(法令遵守)です。この法律は刑事法ですので,違反があれば企業は罰せられる可能性があります。法律で定める必要があるほど,“社員の健康管理は重要であり,企業はそれを守る責務がある”ということです。従業員の皆様はこのことをご存知でしょうか。

受診率100%を目指すためには?

厚生労働省の「平成19年労働者健康状況調査」では,過去1年間に定期健康診断を受診した労働者の割合(受診率)は,81.2%となっています。会社としては100%であるべきですが,およそ2割の方が未受診であり,法に背いていることになります。健診受診率100%を目指して,就業規則に「定期健康診断受診の義務」を盛り込むという会社もあると思います。その際,法律を守ることと,会社の財産である社員の健康を守ることの2つの視点を併せて理解を広めれば,「健診を受けなけれ ばならない」という意識が従業員の皆様にも少なからず芽生えるのではないでしょうか。
また,企業へ法的義務として課せられている以上,企業はできうる努力と工夫をすべきでしょう。健診受診率向上のために,業務時間内の受診を推奨する,健診実施期間に幅を持たせる,提携健診機関を増やすなど,会社の状況に見合った受診しやすい体制づくりが求められます。

健康診断の結果を有効に活用するには?

さて,定期健診は義務ですが,受けたその後,結果票を従業員の皆様はどのように扱っているでしょうか? 企業としても,「実施したから義務を果たした」ではなく,その結果を正しく読み取り,その後の健康管理に役立ててこそ本来の意味があります。健診結果をもとに自分で健康管理ができるのはごく一部の方であって,多くは「結果の意味が分からない」「生活習慣をどう改善したらよいか分からない」という反応です。残念ながら,「結果を見ずに捨てちゃった」という方がいるのも現実です。
私が担当した,ある企業での例をご紹介します。健診の結果,「再検査・精密検査・受診・治療」の判定となった従業員のその後の対処行動について調べてみたところ,6~7割の方が二次健診を未受診でした。未受診の理由で多いのは,「症状がないから」と「忙しいから」です。せっかく身体からSOSのサインが出ているのに放置してしまうのは,健診を受けた意味がないので大変残念に思います。無症状の段階から病気のサインを拾い対処すること(病気の早期発見・早期治療)が健診の大きな目的の1つですので,これは無視できない状況です。従って,事業者は,健診結果の有効な活用の手立てを講じる必要があります。

無料で受けられる「二次健康診断等給付」

健診結果を有効活用し適切な保健指導へ

健診にて異常が指摘された方を対象に,健診後のフォロー面談を実施する企業があります。それには法的根拠が存在します。労働安全衛生法には「事業者は,健康診断の結果,特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し,医師又は保健師による保健指導を行うように努めなければならない」「労働者は,健康診断の結果及び保健指導を利用して,その 健康の保持に努めるものとする」と明記されています。保健指導は努力義務という位置づけですが,安全配慮の観点から実施している企業は多くあります。
弊社でも健診後の面談を担当させていただいていますが,対象者のなかには,“面談なんて必要ない”“説教されるんじゃないか”と思っている方もいらっしゃいます。しかし,このような面談では,保健師が一方的に改善指導命令を突きつけるようなことはありません。その方の健康に対する認識や様々な背景を考慮し,一緒に生活習慣を振り返り,元気に長く働くためにどうしていくかを考える場であり,健康に対する動機づけの場でもあります。また,二次健診を受けていない方に対しては,状況をお伺いした上で,その必要性を説明し,受診勧奨を行います。「症状がない」「忙しい」という状態であっても,自ら受診行動を起こせるよう背中を押し,適切な医療につなげるという橋渡しの役割を担っています。

1年間の成果を評価する機会に

健診は,法律で決められたものとはいえ,身体の状態を確認し日々の生活を見つめ直す,1年にたった1度のチャンスです。この与えられたチャンスがあるわけですから,健康な状態を維持する機会を前向きに捉えていただきたいものです。見方を変えれば,健康な状態を維持・向上してきた成果を評価する機会と捉えることもできます。
そして,企業における健康管理は,企業(人事労務担当者)と産業保健専門職(産業医や保健師など),従業員本人の3者の協力がないと成り立ちません。企業は健康管理体制の構築を,産業保健専門職は専門家として必要な助言の提供や企業と従業員のパイプ役を,従業員は資源を有効に活用し自身の健康管理に努める,というようにそれぞれの立場で取り組む ことが重要です。
企業によっては,産業保健専門職が不在の場合もあるので,そのような資源がない場合は,産業保健推進センター,地域産業保健センターに相談し,活用の検討をするなどの措置が求められます。

次回はオンサイトカウンセリングについてお話します。ご期待ください。

松木 美那子(まつきみなこ)
保健師。健診機関にて3年半勤務の後,現職に就く。保健同人社では,企業や健保における健康づくり企画や運営に携わり,健康診断後のフォロー面談等に従事。EAPグループの配属となり,心とからだ両面からの従業員支援について企画開発に携わる。

(月刊『人事マネジメント』2012年8月号より)

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