EAPコンサルタントのコラム2016年1月(vol.72):バレンタインはセクハラですか

 

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バレンタインはセクハラ?

2016年が明け、もうすぐ2月。2月と言えば、節分と並んで今や国民的イベントとなっているバレンタインデーがあります。女性社員からお金を徴収して誰かが一括して購入に行き、同僚や上司の男性達に配ることが定例化している職場も少なくないようです。ただし、そんな慣習に否定的な意見もあります。その内のひとつが「女性だからと言って自腹でチョコを買わないといけないのはセクハラではないか」という声です。さて、バレンタインのチョコ代徴収はセクハラなのでしょうか。
この問題を考える前に、セクハラの“線引き”はどこか、ということについて考えてみたいと思います。

「…だけでセクハラ」は本当?

「視線があっただけでセクハラ」「挨拶しただけでセクハラ」など、「だけでセクハラ」という言い方を、よく耳にします。実際にそんな訴えを受けて対応に困っている、と相談を受ける場合もありますし、「だからセクハラなんて考え方自体がおかしい」と“セクハラ否定論”の根拠として例に挙げられる場合もあります。
「だけでセクハラ」の話を聴いていると、「された側が“不快と感じるかどうか”が基準」という言葉が独り歩きしているのではないかと感じます。つまり、どんなに些細で非常識なことでも、された側が“不快”と主張さえすれば、それが線引きとなるという考え方です。これは、はっきり言って誤解です。

何を基準とするか

確かに、セクハラかどうかは、した側、いわゆる加害者側にハラスメントの意識があったかどうかではなく、された側がどう感じたかが基準になります。これは、「悪気なく」セクハラをしてしまう例が非常に多いためです。された側にとっては不快で、断りたくとも断れない状況だったのに、した側は「好意を示したつもりだった」「相手も喜んでいると思った」と主張することはよく起こります。この際に、「双方の言い分が異なるので痛み分けで手打ち」とするのでなく、された側の感じ方を重視して決めることが、セクハラ事案では求められます。
しかしそれは、「された側の主張を100%通す」という意味ではなく、「平均的な女性(男性)労働者の感じ方」を基準とすることが適当と言われています。ただし、会社全体としてセクハラ体質がある場合は、この「平均的な」感じ方自体が偏っている可能性があるので、“職場の常識”だけで判断することは要注意です。

セクハラの定義から考える

また、セクハラは「職場における」「性的な言動」によって、相手に不利益を与えたり、就業環境を悪化させること、と定義づけられています。ですから、「職場」での「性的な言動」なのか、そして、「不利益」または「就業環境の悪化」となっているかを考える必要があります。
「職場」とは、オフィスに限らず出張先や接待の席、社外での打合せの場も含まれます。
「性的な言動」は、性的冗談やからかい、食事やデートにしつこく誘う、必要なく身体にさわる、などの例が挙げられています。単に「見つめる」だけでは、それのみで性的言動とは言いかねますが、やめてほしいと意思表示したにもかかわらず、しつこく続けているなら、セクハラと言わざるを得なくなってきます。

「セクハラ認定=職場として対応すべき」ではない

セクハラは職場の問題ですので、当然職場としての対応が求められます。しかし、セクハラに該当しないなら何もしなくてよいというわけではありません。厚生労働省による、いわゆる『セクハラ指針』の中では、セクハラ発生の恐れがある場合や、該当するかどうかがグレーな場合でも、職場として相談対応するよう、示されています。その中には、「女性だからお茶くみ」のような性別役割分担意識も、なくしていくことが重要であると、謳われています。

バレンタインはセクハラ?

さて、これらの点を念頭に置きながら、「バレンタインのチョコ代徴収はセクハラか?」という疑問に立ち戻ってみましょう。
「職場」の事案であることは間違いありませんが、チョコ代を出させるだけでただちに「性的な言動」とは言いかねます。また、「平均的な女性労働者」が「不利益または就業環境の悪化」と思うかと言う点も疑問です。ですので、セクハラかそうでないかという点だけで見ると、セクハラとは言えないと思います。
ただし、女性であるということのみを理由とした義務であるとしたら、そして、ノーと言えない状況なら、よい慣習とは言えません。
特に、「ノーと言えない」という点が重要です。セクハラ問題は、風通しの悪い問題で起こりがちです。加害者側は「そんなつもりはなかった」と言い、被害者側は「断りたいが断れない」と言う、この状況にコミュニケーションの問題が表出しています。きちんと言葉で意思表示しあえる職場環境とコミュニケーションスキルの育成が、セクハラ問題をなくしていく道です。

(2016/1/20)

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