EAPコンサルタントのコラム2014年5月(vol.52):『レイチェルの挑戦』とは――こころの連鎖

 

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『レイチェルの挑戦』とは――こころの連鎖

今回は、レイチェルというアメリカのある少女が残した大きな足跡について、皆さんにご紹介したいと思います。

『レイチェルの挑戦――暴力に、親切と情熱で応える』――2013年10月、米国アリゾナ州フェニックスで開かれた国際EAP協会年次大会の初日の基調講演で、レイチェルの父ダレル・スコットが次のような話を共有してくれました。

1999年コロラド州コロンバイン高校で、同校に在学する少年二人による銃乱射事件が発生しました。銃を持った容疑者少年二人は、校内のカフェテリアや図書館で生徒たちに向かって銃を発射し、生徒12人と教員1人を射殺、24人に重軽傷を負わせた後、自殺しました。
レイチェル・スコットは、丘に座って昼食をとっていて最初に散弾銃を浴び、犠牲になった少女です。17歳でした。彼女の弟も、銃乱射の現場である図書館にいましたが、九死に一生を得ました。

彼女が亡くなった後、家族は、彼女の日記や、メモ書きのノート、絵などを見て驚いたといいます。
強制収容所でナチスの犠牲になったアンネ・フランクが残していたものとの驚くべき類似を発見したからです。

「誰とでも公平に、親切に接する、情熱をもって、進んで声をかける」、「自分は『凡人』だとは誰にも言わせない人間になる」――レイチェルは亡くなる前にこうメモに書き記していました。また、美しい少女が涙を流しており、そこに薔薇の花が開いているという、彼女が日記に描いた絵も、アンネが描いていた絵と驚くべき共通点が見られました。彼女が生前アンネ・フランクの作品にどれだけ接していたかはわかりません。ただ、そういった共通点があるだけでなく、彼女は実際、誰に対しても偏見をもたず、公平に、そして親切に接していたと言います。例えば、発達障害があって誰からも相手にされていなかった男子生徒や、転校してきたばかりで周囲にとけこめず、いじめにあっていた女子生徒―彼らに真っ先に話しかけ、親切に接し、親友になったのが彼女だったそうです。
この、「誰とでも公平に、親切に接する」という彼女の意思(遺志)を少しでも多くの子どもたち、そしてその中に含まれる悩みを抱えている子どもたちに伝えるために、父親のダレルと、同じ事件の被害者である弟は、全米の学校を回って講演やワークショップを行いました。そこにはレイチェルの意志の連鎖が生まれてきたといいます。
ある講演では、体格がよくて、学校一強いフットボールの選手が参加していました。実は彼は、自分が強いことを後ろ盾に周りの生徒たちをいじめていました。レイチェルの話を聴いた後、彼は自分の行為を反省し、どうしたら償えるのか、どうしたら自分の気持ちをこれまでいじめていた生徒たちに伝えられるか、考えました。翌日、学校の下校時間、一斉に下校する生徒たちの間に、あるプラカード(大きな紙)を掲げて立っている彼の姿がありました。そのプラカードにはこう書かれていました。「I’m sorry.」

レイチェルの父親による基調講演に耳を傾けるフロアでは、あちこちで感動の渦が巻き上がっているのが感じられました。この話が、EAPとどうつながるのでしょう。確かにレイチェルは、未成年による銃使用の犠牲者ではあるのですが、「誰にでも公平に、親切に接する」という彼女の信念は、我々がもっている偏見や好き嫌いを乗り越えて、人とつながっていこうという強い意志の表れでもあります。弱い者いじめ、偏見、思い込み、そういったことは「いじめ」につながります。それは学校だけでなく、職場でも起きています。ある人がどういった資質を持っていようと、障害があろうとなかろうと、公平に親切な気持ちをもって接する。それがいじめやハラスメントのない、快適な職場作りにもつながる、そういうメッセージだと、私は受け止めました。

(2014/05/16)



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