EAPコンサルタントのコラム2014年11月(vol.58):24時間戦えますか

 

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24時間戦えますか

変わってきた“ジャパニーズ・ビジネスマン”と、変えられない現実

24時間戦う“ジャパニーズ・ビジネスマン”像があった頃から時代は変わり、昨今ではプライベートな時間を大切にする人が増えてきているといわれています。実際、日本人の年間労働時間は、1975年~1990年には2,100時間前後で、欧米諸国に比べて200時間以上多かったのですが、2012年は1,745時間で、イタリア・アメリカ・カナダなどと肩を並べるくらいの時間でした。(【出典】独立行政法人 労働政策研究・研修機構『データブック国際労働比較2014』)
確かに、“会社が生活のすべて”などという生き方は減ってきて、仕事と生活を調和させようとする価値観も広がってきているようです。ただ、それが働き方の主流になっているのかというと、必ずしもそうではないように思えます。
実際、上に書いた労働時間にはサービス残業の分が含まれていません。さらに、パートなどの非正規社員の数が増えて平均労働時間を引き下げています。このため、フルタイム社員の労働時間は、まだ他国に比べて多いともいわれています。
今の事業環境がきれいごとをいっていられるほど甘いものではない、ということは理解できるのですが、過重労働をなくす必要があるのには、きちんとした理由があるのです。

「働きすぎ」はなぜいけないのか

勤勉が美徳のひとつである日本人にとって、「働くこと」は一般によいことで、それが高度成長をもたらした要因の一つともいわれました。ところが、1970年代より、「過労死」の問題が徐々にクローズアップされました。はじめのうちは「働きすぎで死ぬことはない」などと発言する方もいましたが、多くの過労死事案を経て、少しずつ見方が変わり、2001年には今の基準に近いかたちにまで、労災認定基準が改正されました。
過労死というと過労自殺の印象が強く、まずうつ病をイメージするかも知れませんが、うつ病以前に過重労働との関連を認められたのは、くも膜下出血などの脳疾患と、心筋梗塞などの心臓疾患でした。時間外労働がひと月60~80時間(つまり一日3時間前後の残業)で、脳疾患や心臓疾患のリスクが2~3倍になる、といわれています。また、下のグラフにある通り、週の労働時間が61時間以上(一日4時間超の残業)で睡眠が5時間以下の場合、60時間以下・睡眠6時間以上に比べて、急性心筋梗塞のリスクは5倍近くにはねあがります。

労働時間/勤務日の睡眠時間の組み合わせと 急性心筋梗塞のリスク

脳疾患や心臓疾患は、突然死に至ることがしばしばあります。サッカーの松田選手が心筋梗塞で突然亡くなったことは記憶に新しい出来事です。サッカー選手の心筋梗塞は過労死とは違いますが、急性心筋梗塞が前兆を自覚するのが難しい病気であることは同じです。くも膜下出血も、出血するまでは自覚症状がほとんどないといわれています。つまり、これらの病気への対策は、生活の中でリスクを下げておくことが非常に重要なのです。
リスクを下げるためには、高血圧、糖尿病、脂質異常、喫煙のような危険因子、それから過重労働をなくしていくことです。過重労働がなぜ健康問題に影響を与えるのかというと、ひとつには、労働負荷の増加があります。それに加えて、睡眠時間に代表される疲労回復時間も減少してしまいます。両者の相乗効果で、疲労と回復のバランスを大きく崩していく結果になるのです。

「過労死」をなくしたい理由

誤解しないでいただきたいのですが、「働くことは悪いこと」と言いたいわけではありません。私自身も、どちらかというと「働き者」に属する方だと思います。ただ、「過ぎたるは及ばざるがごとし」の故事成語の通り、「働きすぎ」は減らすべきだと思います。
個人的な話になりますが、私が以前勤めていた職場でも、過重労働が原因で亡くなった方がおられました。その方はうつ病を発症され自殺に至ったのでした。当時私は心理職とはまるで異なる仕事をしていましたが、その後心理職を目指すことにした重要な要素のひとつになったと思います。
今年11月1日に「過労死等防止対策推進法」が施行されました。この法律に対して、内容が不十分といった批判もあるようですが、過労死の防止対策の実施が国の責務として明記されたことには、意義があるのではないでしょうか。
仕事は私たちの生活を支え、時に生きる喜びももたらしてくれます。仕事によって亡くなる人が一人でも減っていくことを、心から願うばかりです。

(2014/11/25)

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