EAPコンサルタントのコラム2015年1月(vol.60):役に立たない? インフルエンザ的処世術

 

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役に立たない? インフルエンザ的処世術

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによっておこる急性呼吸器疾患で、冬になると北半球と南半球で交互に流行を繰り返し、熱帯および亜熱帯地域では年間を通じてはやっています。我が国では、変動はあるものの、毎年1千万人前後の人がインフルエンザにかかっています。また、直接的および間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡を推計する「超過死亡」という概念があり、この推計に基づく年間死亡者数は、約1万人と推計されています。

インフルエンザと人との長い歴史

古代ギリシャの紀元前412年、「医学の祖」ヒポクラテスは、インフルエンザとおぼしき流行性疾患の記録を残しています。「ある日突然に多数の住民が高熱を出し、震えがきて咳がさかんになった。たちまち村中にこの不思議な病が拡がり、住民たちは脅えたが、あっという間に去っていった」

日本でも、平安時代の『源氏物語』四帖「夕顔」の一節に「この暁よりしはぶきやみにや侍らん、かしらいと痛くて苦しく侍れば」と、「しはぶきやみ(咳逆疫)」と呼ばれる流行性疾患のことが書かれています。

インフルエンザという名前は中世イタリアで名付けられました。当時は感染症が病原体によっておきることは知られておらず、占星術師らは、この病の周期的な流行は天体の運行や寒気の影響と考えました。「影響」を意味するイタリア語“influenza”がインフルエンザの語源になりました。

巧みな侵入戦略

ウイルスの侵入経路

インフルエンザウイルスは、自力で仲間を増やしたり、単独で生存したりすることができません。つまり、仲間を増やし、生存するのに適した環境が必要なわけですが、人の鼻や喉などの上気道の粘膜細胞がその格好の場所になっています。胃腸や肝臓などの細胞ではないのです。
インフルエンザウイルスは、人体に侵入するための戦略を二つ持っています。一つは、患者の咳やくしゃみ、会話などで飛び散るしぶき(飛沫(ひまつ))の中に潜み、近くにいる健康な人に吸い込ませるのです。もう一つは、患者の咳やくしゃみ、鼻水に忍び、それに付着した患者の手から環境中(ドアノブ、スイッチ、机、つり革、手すりなど)に移動して待機します。健康な人がそれに触れ、その手が自分の口や鼻を触れることによって侵入を図ります。ただし、インフルエンザウイルスは環境中では、気温や湿度等の状況によって異なりますが、数分間から長くても8時間程度しか生き長らえず、ウイルスにとっては命がけでもあるのです。

口や鼻から人体への侵入に成功したインフルエンザウイルスは、鼻腔から気管支までの気道にある細胞に結合し、細胞の中に侵入します。これを感染と呼びます。感染は、ウイルス表面のタンパク質と人体の細胞の受容体が鍵と鍵穴のようにピタリと結合した場合におこります。インフルエンザウイルスが手についただけでは感染とは言いません。手を洗えばウイルスを洗い流せるからです。

他力本願的な破壊活動と後片付け

インフルエンザウイルスは自力では増殖できないので、感染した細胞の中で自分の遺伝子のコピーを作り増殖していきます。すると、ウイルスを増やした細胞のほとんどは死滅してしまいます。いわば、他人のコピー機を勝手に使って大量コピーした後に、それを破壊するようなものです。増殖したウイルスは、死滅した細胞の外に放出され、再び健康な他の細胞へ侵入して増殖します。このようにして、1個のウイルスは1日で100万個以上に増殖します。

インフルエンザウイルスが感染する部位と症状

一方、人体には死滅した細胞をきれいに清浄して吸収する働きがあり、白血球をはじめとした細胞が総動員されます。これを炎症反応と呼びます。この死滅した細胞の後片付けに伴い、熱や咳、喉の痛み、関節痛などが出ます。このようにして症状が現れた状態を発症と呼び、インフルエンザにかかったことになります。

ところが、インフルエンザウイルスに感染しても、全く症状の出ない不顕性感染例やインフルエンザとは診断しがたい軽症例があります。インフルエンザの不顕性感染の割合は20%程度という報告もあります。たちの悪いことに、不顕性感染でも感染力はあります。

人から人へと漂流を続ける

インフルエンザは、特に人と人の距離が短く、濃厚接触の機会が多い小中高校や幼稚園、保育所では、インフルエンザの集団発生がおこりやすく、家庭から学校へ、学校から家庭へと地域での感染が広がります。日本では例年12月中旬から流行し始め、学校や職場で欠席者が増えてきたところで冬休みに入ります。そこで一旦おさまりますが、年が明けて学校や職場が再開すると再び患者数が増え、4月頃まで続くという経過をたどります。

その後インフルエンザは、姿を消したように見えますが、人から人へと水面下で伝播を続け、やがて、冬を迎える南半球に辿り着き、人体への侵入活動を活発化させることになるのです。インフルエンザウイルスは、生存に適する条件に変化が生じない限り、人の助けを借りて生き続けることでしょう。

(2015/01/20)

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