EAPコンサルタントのコラム2016年6月(vol.77):1×3は3にならない!
~人が多いほど生産性が下がる?~

 

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1×3は3にならない! ~人が多いほど生産性が下がる?~

心理学といえば、メンタルの不調を予防するとか、癒しを提供するとか、個人を対象としたイメージがあるかと思いますが、今回はほかの一面をご紹介いたします。

1×3=3以下?(社会的手抜き)

人が集まり集団になると、その数以上の力が発揮できると考えられがちですが、実はそうはならないという話です。

心理学者のラタネとハーディは、チアリーダーに次のような条件で実験を行いました。①ヘッドフォンをして周りの声が聞こえないようにし、一人で大声を出し声の大きさを測る。②同じくヘッドフォンをしてグループで大声を出し、各自の声の大きさを測る、の二つの条件でした。大方の予想は、グループになった方が、各自の声も大きくなるというものでした。「みんなで力を合わせれば、力を発揮できる!」とよく言われていますから……。しかし、実際の結果は、グループになった時の方が、1人の時より各自の声が小さくなりました。しかも実験に参加したチアリーダー達は、どちらの条件でも全力を出したと真剣に思っていました。 つまり無意識で1×3は3以下になったのです。人が集まり力を合わせると、「無意識でも手を抜いてしまう場合がある」ということで、「社会的手抜き」と呼ばれています。「運動会での綱引きで、3対3で行うより、1対1の方が1人の力量が多い」のは身近な例かもしれません。

1×3=1以下?(集団浅慮)

よく、「3人寄れば文殊の知恵」と言われますが、実際は全く逆で、人が集まるほど検討能力や判断力が損なわれる現象は起こります。つまり「社会的手抜き」よりもっと極端で、「集まるだけムダ」という話です。

これは、ある軍事作戦の失敗をもとに、心理学者のジャニスが分析を行い、失敗を起こしやすい集団の三つの特徴をみつけました。①集団の結束(凝集性)が高いこと ②意思決定を行うときの構造的な問題(例えばイエスマンが多い集団)③集団を取り囲む状況、特に意思決定までの時間が迫っている場合、です。このような条件では、人は自分達に都合の良い解釈を行い、反対意見を述べるメンバーには圧力をかけます。その結果いくら優秀な人が集まっても、愚かな意思決定をしてしまうことになります。例えば「短期間の新商品開発会議で、とんでもないアイデアが採用されてしまう」という現象が近いかもしれません。

1×3=マイナスになる!! 1人の力で組織を壊す!!

今までは、集団を対象とした調査や実験をご紹介いたしました。今度は実践編をご紹介いたします。

集団を機能させないためのマニュアル(シンプルサボタージュ・フィールドマニュアル)がアメリカの公式文書として公開されています。これはCIAの前身組織であるOSS(Office of Strategic Serves)がスパイとして敵の組織に潜入し、その組織を機能停止に追い込むためのポイントが書かれています。その一部をご紹介いたします。

意訳していますが、いかがでしょうか? 組織でこのような状態が続くとどうなるでしょうか? イメージするだけで疲れ果ててしまいそうです。

集団を扱う心理学

集団を研究・調査する心理学の分野を社会心理学や集団心理学と呼びます。人は集団になると思いもしない行動をすることがあります。今回の例は、実験や調査から発見された、集団のネガティブな現象の一例です。それとは反対に、集団になれば同じ規範に従い共に行動する「同調行動」という現象もあります。

現実社会で、“集団のネガティブな側面が表れないようにするにはどうしたらよいか?”“組織の力をより引き出すためには何が必要か?”が問われています。特に経営にとって、人は経営の3要素(人、もの、財政)であり、重要な一つです。だから、一般的に領域が違うと思われがちですが、経営学には社会心理学が取り入れられています。

 では最後に、集団のネガティブな側面を避けるためには、どうしたらよいか?に一つの回答をいたします。それは1×3=マイナスになる!! 1人の力で組織を壊す!! でご紹介したことを、“行わない”ことです。あまりにも簡単でびっくりされるかもしれませんが、①“行わない”ことを“続けること”、②“その逆の行動をすること”が当たり前のようで難しく、実は大切ではないかと思います。

(2016/6/16)

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