EAPコンサルタントのコラム2016年9月(vol.80):ポケモンGO狂想曲をストレスモデルで読み解く

 

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ポケモンGO狂想曲をストレスモデルで読み解く

今年最大の流行と言っても過言ではない「ポケモンGO」。実際に遊んでみた方も多いのではないでしょうか。かくいう私も日本でのリリース当日にダウンロードして、モンスターボールを投げてみました。AR(拡張現実)技術を活用したゲームとして、新しいゲームの楽しみ方を提供していると感じました。実際に外を歩いているとポケモンが現れてゲットするという仕組みで、ゲームの世界が現実に融合しているように感じられました。また、現実世界の店舗から彫刻、落書きまでさまざまなシンボルが、ゲームの世界ではポケストップ(アイテム配給所)となることで、現実の世界がゲームに融合しているような印象も受けます。

ポケモンGO狂想曲

実際にゲームを楽しんでいる私も眉をしかめたのは、ポケモンGOプレイヤーに関するニュースです。死亡例を含む多数の交通事故、交通違反、また未成年の補導などで警察による取り締まり強化が行われるなど、対応に追われる様子は何かゲームに社会が振り回されているように感じられます。それだけ影響力の強い技術であり商品であるということが前提であると理解した上で、今回の「ポケモン狂想曲」ともいえる一連のトラブルを技術革新に対する人間への適応という視点で考えてみたいと思います。

ストレスモデルで読み解く技術革新への適応

今年はポケモンGOのリリースだけではなく、多くの働く大人にとって「ストレスチェック制度元年」でもあります。労働安全衛生法の改正により、50名以上の事業場に年1回以上のストレスチェックを義務付けることとなりました。実はこのストレスチェックで根幹となる「ストレスモデル」は、テレビやインターネット、AR、人工知能などの技術革新に社会が直面した時にも当てはまります。

そもそも、個人のストレス要因は、家族の病気や結婚、妊娠、昇進などその人にとって環境の変化が大きくなる事象であるほど影響力が強いとされています。この個人を今の日本社会に置き換えてみます。社会は今ポケモンGOリリースという現象に直面しており、これは善悪問わず人の行動を変えたり、社会のルールを破る原因になるなど、社会環境を大きく変化させる「ストレス要因」となっています。このまま大きな影響が続けば「ストレス反応」が大きくなり、社会全体が病気になってしまいます。60年前の「一億総白痴化」と同じ現象です。

「ストレスチェック制度で用いる調査票の必須要素を用いたストレスモデル」

図:ストレスチェック制度で用いる調査票の必須要素を用いたストレスモデル

テレビと一億総白痴化

今よりさかのぼること60年。1956年、急激に普及するテレビの影響力を恐れた邦画製作会社5社は、テレビへの劇映画提供を打ち切りました。映像作品をより身近にするテレビという技術革新が社会へ与えた影響力を推し量るエピソードです。そのため、テレビ各局はアメリカのテレビ映画を購入して放送しました。この翌年にはテレビが低俗なものであり、受動的にテレビばかり見ていると想像力や思考力が低下するということで「一億総白痴化」という言葉が流行しました。

長い年月の中で、テレビは私達の想像力や思考力を低下させたと言えるでしょうか。おそらく「場合によりけり」というのが答えかと思います。今でもテレビを幼少期から見せすぎないように「メディアに子守りをさせないで!」などと、悪影響を防ぐためのポスターを小児科の待合室などで見かけます。子どもの発達に悪影響であるということですが、大人向けに同様のポスターが張られないのは、ほとんどの大人はテレビという技術革新に適応したからです。テレビの特性を理解し、社会生活に支障がない程度にテレビを視聴することができるようになってきたということでしょう。

「周囲のサポート」とプレイヤーの対処でAR技術に適応できる社会へ

テレビのように、おそらく今回のARという技術革新も同様にその特性を多くの大人が理解し、社会生活に支障がない程度に節度ある楽しみ方ができるようになるでしょう。ただし、そのためにはストレスモデルでいう「周囲のサポート」が欠かせません。

個人にとっての「周囲のサポート」は職場では上司や同僚によるサポートが中心であり、これによって環境の変化を乗りきることで、「ストレス反応」を最小化しています。社会にとっての「周囲のサポート」は政府や警察、自治体による注意喚起や寺社仏閣や鉄道会社などによるゲーム対象外とする申請などが当てはまるでしょう。ゲームの提供会社も必要な改変や情報提供をする必要があります。個人がさまざまなストレス要因にさらされながらもメンタルヘルス不調にならず適応した人生が送れるように、社会もこのようなサポートを得ながらポケモンGOという社会現象に適応していくことでしょう。

人格形成途上の未成年には特別な対処が必要

テレビについても同様ですが、技術を理解して適切な利用を行うには一定の理解力と自律心が必要です。そのためには、人格形成がなされていることが求められますが、未成年は人格形成途上となるため、社会が適応していく中でも特に注意して見守りやルール作りが必要となります。社会的にAR技術に適応したとしても、未成年には継続的にケアを行う必要があります。周囲の大人が節度ある利用ができるよう一緒に考えていくことが肝要です。

まずは、私自身を含むゲームのプレイヤーが「歩きスマホ」をはじめとした社会マナーを乱す行為を慎むことから始めませんか。

(2016/9/28)

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