EAPコンサルタントのコラム2016年10月(vol.81):部下の本気が見たい!! やる気を引き出す質問力

 

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部下の本気が見たい! ~やる気を引き出す質問力~

 必要に迫られてもやる気が出ないとき、そこに私たちはいくつかの理由(原因)を挙げます。例えば、運動の習慣がない人が、健康のために有酸素運動を勧められたとしたら。きっと、忙しいからとか、今日は疲れているからとか、足の裏のイボが痛いからなど、いろいろな理由(原因)を挙げるでしょう。では、そのような理由(原因)が解消されたとしたら、その人はやる気を出すのでしょうか。そんなことはありません。きっとその人はこう言うでしょう。「天気が悪いからなぁ」と。ところが、自分よりもメタボ体型だった人がスリムになったとか、気になっている異性がスポーツ好きであることを知ったとか、そんなふとしたきっかけで突然運動を始めたくなることがあります。いったい、この間までの理由は何だったのか・・・と周囲の人は驚くでしょう。

人材育成における基本姿勢

 『マネジメント』で著名なピーター・ドラッカーは、組織として成果を上げるための優先順位は、Must(すべきこと)→Can(できること)→Will(したいこと)であり、組織で仕事をする人はこの順番を間違ってはいけないと述べています。部下や後輩の育成においても、まずは職場で求められる基本的な職務を遂行できるように教育し(Must)、次に組織のメンバーとして自立できるように成長の機会を提供し(Can)、そして新たな価値を生み出せるようにチャレンジを促す(Will)のが理想的です。実は、仕事に対する「やる気」は、このCanとWillが重要な鍵を握っています。

 Must(すべきこと)を伝えるのは比較的容易です。例えば、従業員がミスやトラブルを起こした時には、その原因を確認し、同じことを繰り返さないように教えればよいのです。では、Can(できること)とWill(したいこと)はどのように引き出せばよいのでしょうか。

 仕事へのやる気が感じられず、モチベーションの低い従業員や自信のない従業員について、「なぜモチベーションが低いのか」「なぜ自信がないのか」と、その原因を追究してもあまり意味がありません。なぜなら、それは「しない(できない)」という本人の意思の表れであって、理由(原因)はとってつけたものに過ぎないからです。それではずっと「しない(できない)」のかというと、それでは仕事になりません。誰もが瞬間的には本気を出しているから、日々の仕事をこなすことができるのです。人材育成において大切なのは、原因を探ることではなく、「したい(できる)」への変化を起こすきっかけを与えることです。

やる気を引き出す質問力

 Can(できること)とWill(したいこと)を引き出したい時に役立つのが、視点を変える質問です。日常とは違う角度から今の自分の状況を見つめさせることにより、本人が気付いていない可能性を引き出す質問です。いくつか例を紹介します。

◆ 『もし、あなたが○○の立場だったらどうする?どうして欲しいと思う?』

 自分がお客様だったら、他部署のメンバーだったら、経営者だったらなど、他者の視点に立って考えてもらう質問です。例えば、他部署に対して協力的でない人の場合には、自己(自部署)中心的な思考を脱却させるのに有効です。本人が共感しやすそうな人物を例示するのがポイントです。

◆『もし、物事がうまく運んだとしたら、自分や部署、会社にどんなメリットがあると思う?』

 ネガティブと思われる状況において、相手にチャンスを見出してもらうための質問です。例えば、業務負担が増えることで不満が高まるような場合に、消極的で回避的な思考を脱却するのに有効です。相手が大変な状況であることに共感しながら問うことがポイントです。

◆『これまでに似たような経験をした時はない?その時はどのように解決できた?』

 困難な場面に直面した際に、本人の経験から自発的に解決策を導き出してもらうための質問です。例えば、トラブル対応に困惑しているような場合に、過去に困難を乗り越えた経験があることを思い出させ、自信を持たせるのに有効です。自分で解決できていることをしっかりと評価することがポイントです。

◆『あなたは将来どんなふうに仕事をする人になりたい?その将来の自分はどのように対応するだろう?』

 将来の理想像をイメージしてもらい、そうなったつもりで眼前の課題に取り組んでもらうための質問です。例えば、マンネリ状態でモチベーションが低下しているような場合に、新たな目標を見つけさせるのに有効です。将来像をできるだけ具体的にイメージしてもらうことがポイントです。

変化を信じること

 心理カウンセリングにおいて、かつては相談者の悩みの原因を追究することに焦点が当てられていました。しかし、原因を追究するプロセスは、時間もコストも心理的苦痛も伴います。相談者に負担をかけず、有効に支援する方法はないだろうか。そのような試行錯誤の歴史の中で生まれたのが解決志向アプローチという新しい心理療法です。その中心となるのは、「人には必ず問題解決のためのリソース(資源)があり、変化は常に起こっている」という考え方です。

 部下が変わることを信じ、部下が自らのリソース(資源)を活用できるように刺激することで、まだ見ぬ“本気”の姿を見ることができるかもしれません。

 

参考文献
実践するドラッカー[思考編] / 上田惇生監修・佐藤等編著
インスー・キム・バーグのブリーフコーチング入門/インスー・キム・バーグ、ピーター・ザボ著 長谷川啓三監訳

(2016/10/28)

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