EAPコンサルタントのコラム2017年4月(vol.87):介護準備、今できること ~親の老後を考える~

 

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姉弟で親の老後について話し合いました

 私は三人姉弟の二番目で、実家は四国です。姉弟三人とも故郷を離れて都市部で生活しており、父は数年前に他界したため、今は実家に母が一人で暮らしています。先日、姉からの声かけで、三人で集まって高齢になった母の今後について話し合いました。

 幸運なことに、わが社では介護の準備を目的とした研修を行っており、講師陣は介護保険や介護制度に精通しています。三者会議の前に、研修に使っている資料等で予習することができました。

 正直、母の老後の生活設計については、これまで不安に思いながらも先延ばしにしていましたが、考える機会が持ててよかったと思います。早めに手を打つことで、親や子世帯の負担を減らせるとも感じました。特に田舎に一人暮らしの親を残している方に、今からできることをお伝えしたいと思います。

親はどこに住まうのがよいか

 親と子が離れて暮らしている場合、親はどこで老後を過ごすのがいいのでしょうか。便利で安心だから子の元に引き取るほうがいい、と簡単に決めてしまうのは禁物です。住み慣れた地域や慣れ親しんだ生活から切り離された際に感じる喪失感を、自分の根が失われた感覚という意味で、「根こぎ感」と言います。強い「根こぎ感」が引き金となって、うつ病や認知症を発症する高齢者も少なくありません。

 母の場合は、生まれも育ちも今の土地で、都市部に住んだ経験はなく、たくさんの友人知人、親戚が周囲にいます。なるべく今の土地に住むほうがいいのではないか、というのが三人の一致した考えでした。もちろん、母の意思が最も重要で、確認することが大切なことは言うまでもありません。

介護サービスの利用の前に

 厚生労働省の調査では、介護者の大半は50歳以上で、介護期間は平均で4年7カ月、10年以上続く人も1割以上いるそうです。自分自身の体力気力も落ちていく年代で、介護を担う負担は大変なものです。一人に任せきりにしないこと、介護サービスを上手に活用することをお勧めします。ストレスに関する研究では、負担が大きい状態でも、「周囲のサポート」が手厚いと、ストレス反応が低いことがよく知られています。

 介護サービスの利用に抵抗のある高齢者もいますが、嫌がるからと言って避けるのではなく、早めに動いて時間をかけて慣れてもらうほうがスムーズです。「要支援」の段階から少しずつサービスの利用を増やすことで、親の心理的負担は減らせます。中には、それ以前に地元のケアワーカーに様子を見に行ってもらうなどして、関係を作っておく人もいるようです。

 介護サービスのメニューは市町村によって違うので、まずは親が老後を過ごす市町村の「地域包括支援センター」のパンフレットを取り寄せてはどうでしょうか。具体的な情報を手に入れておくと、より具体的な行動につなげやすくなります。

親の健康状態や生活環境を知る

 介護が必要な時期がいつ頃来るのか、見通しを立てるのは難しいことです。しかし、目や耳の衰え、足腰の弱り、記憶力など、親の健康状態を知ることはその一助となります。記憶力については、テレビタレントの名前が出ないとか、地名が出ない程度なら、加齢による物忘れの範囲と言えます。一方、昨日食事したことや人と会ったことそのものを思い出せない、今の時間や場所がわからなくなる、などが見られたら、認知機能の面で要注意です。

 認知機能に関しては、親がいつまで車の運転ができるのか、させていいのかを考える上でも重要です。田舎に暮らす人にとっては、車の運転ができなくなることは、生活が成り立たなくなるほどのインパクトがあります。ただし、運転できない人のための移動手段が公的サービスとして用意されていたり、「ウーバー」というアメリカ発の配車サービス(一般の人が有料でお客を目的地に連れていく)を特区の中で導入している地域もあります。ちなみに私の故郷では、「デマンドタクシー」という乗合タクシーのようなサービスが提供されています。

 親の記憶力が衰えるとか、ある日突然意識不明になるといった事態に備える上では、先に知っておいたほうがよいこともあります。例えば、保険証や貯金通帳、年金手帳などの置き場所を知っているでしょうか? 財産目録は把握しているでしょうか? 私の地元では、田畑や土地については、法律や契約とは別の、先代や先々代の取り決めで保持されているルールがあるらしいのですが、田舎では結構あることかも知れません。こうした地域の慣習も知っておくと役立ちます。

親の老後に向き合う

 親の老後を考えることは、誰にとっても難しく抵抗のあることです。悪いことを考え出すときりがなく、親の病気や自分たちの負担への不安が表面化して、沈んだ気持ちになりがちです。離れて暮らす関係なら、なおさらです。

 しかし、情報を集める、親と話し合う、生活の移行を徐々に始めるなど、今からできることから少しずつ準備をしておくことで、子世帯のインパクトを軽減することができます。まずは、お盆や法事、喜寿のお祝いなど、機会をみつけてきちんと話し合うことから始めてみてはいかがでしょうか。

(2017/4/10)

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