EAPコンサルタントのコラム2017年9月(vol.92):
ストレスチェックから考える「成功する組織へのヒント」

 

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 皆さんの会社ではストレスチェックを実施していますか?ストレスチェック制度が義務化され、2年目を迎えました。コラムをご覧いただいている方の中にはご自身が受検し、セルフケアに活用するだけでなく、全社のストレスチェック結果を受け、組織改善を検討する立場の方もいらっしゃるのではないでしょうか。全社の結果を集団的に分析してみると、「周囲のサポート」の得点が低く、改善を検討されている方もいらっしゃるかもしれません。厚生労働省が実施した労働者健康状況調査でも「職場の人間関係の問題」がストレスの原因の1位となっています。人間関係の改善が職場のストレス解消に大きな意味を持っているのです。

 私自身、EAPコンサルタントとして日々ストレスチェックの組織分析を行う中で、周囲のサポートが多い・少ない企業の違いは一体何か、また、どのような特性を持った従業員が集まると助け合いの文化が醸成されるのかを問い続けています。そんな中、先日、米国ペンシルバニア大学の組織心理学者アダム・グラント教授によるネット講義を聴き、ヒントを得る機会がありましたので、その内容を皆さまにご紹介したいと思います。

あなたはギバー? テイカー? マッチャー?

 グラント教授は、対人関係におけるギブ・アンド・テイク(与える・貰う)の行為を3つのタイプに分類しています。自社の組織にはどのタイプが多いでしょうか。ここでいう「ギブ」と「テイク」には、直接的な行動だけでなく、精神的な要素も含まれます。

対人関係の3タイプ

①ギバー(Giver:与える人)

困っている周囲の面倒ばかりみて助けを差し伸べるが、自分からはあまり助けを求めないタイプ

②テイカー(Taker:貰う人)

周囲からのサポートを受け取るばかりで、あまり他人を助けないタイプ

③マッチャー(Matcher:双方のバランスを取る人)

他者からの支援も受け取るが、その分自分も相手にサポートをして返すタイプ

 米国の調査での数字ですが、その割合は多い順に、マッチャー(56%)、ギバー(25%)、テイカー(19%)、となっています。また、3つのタイプは経験などにより、変わっていくものであることも明らかにされています。

成功するのはどのタイプ?

 では、実社会でうまくやっていけるのは、どのタイプでしょうか? いろんな人から助けを得られ、知識を吸収できることで、テイカーは世渡り上手といえるかもしれません。実際、テイカーは相手から資源や情報などを引き出すのが上手なことで、成長のスピードは早いそうです。しかし、その後はパフォーマンスが落ちていく傾向にあるといいます。

 では、マッチャーについては、どうでしょうか。マッチャーは他人にしてもらった分を相手に返すことで、恩義に報いています。しかし、一方で他人に何もしてもらえなければ、自分も何もしないという弱みもあります。

 グラント教授の研究では、組織が成功するために大事にすべきタイプとして、ギバーが強調されています。ギバーを増やすことが組織の活性化につながるそうです。ではなぜギバーが重要視されるのでしょう。

ギバーの特徴とは?

 組織のあり方を考える場合、従業員同士が助け合い、知識を共有し、面倒を見る頻度が高いほど、利益率、顧客満足度、従業員定着率、営業費削減ができているというエビデンスがあります。ギバーは相手に時間・エネルギーを惜しまず割くため、組織に大きく貢献しているといえます。しかし一方で、相手に与えてばかりいる関係が続くと、個人の生産性が低下して成績が落ち、自己犠牲の果てに消耗してしまいます。

 実際に営業職、エンジニア職、医学部生を対象とした研究で、成績が最も悪い群はギバーだったという例があります。ところが同じ研究では、驚くべきことに最も成績が良い群もギバーで、このことは注目に値します。

 組織への貢献度は高いけれど、燃え尽きてしまうことも多いギバー。では、ギバーが成功するための秘訣は一体何でしょうか?

ギバーが成功するための秘訣

 ギバーがうまく力を発揮するためには、個人が工夫すべき点と組織で醸成するべき文化があります。グラント教授は具体的に以下を成功するための秘訣として挙げています。

①燃え尽きの防止

成功しているギバーの多くは「5分間の親切」というように、時間を決めて相手へアドバイスや知識共有、ポジティブフィードバックを行っていることがわかっています。何でもやりすぎは禁物で、自己管理の意識が大切です。

②誰もが助けを求められる文化・環境

助け合いという行為の75~90%は、頼むところから始まることが分かっています。成功しているギバーは組織に大きな貢献をしますが、時には自分も「受け取る側」となることを求めます。その部分をうまく回すことができれば、職場で助け合いの文化が自然に醸成されることにつながります。

 逆に、サポートが薄い職場をヒヤリングするとよく聞かれるのが、「周りは忙しそうで頼みにくいし、誰に頼めばいいかわからない」、「助けを求めると無能と思われるのでは」という声です。そうした職場ではそもそも頼むという行為自体が行われないため、助け合いが職場で発生しにくく、個人がもくもくと仕事をする文化になってしまっていると思われます。

ギバーが評価されるような社会・組織づくりを目指して

 助け合いや和を重んじる文化から、個人主義の競争社会への変化に、ますます拍車がかかる昨今ですが、一方でそれが本当に組織や個人の成功につながっているのかを疑問視する声も多く聞かれるようになっています。他人を蹴落として勝ち抜くことがすべてではない、相手を助けること、組織や他者に貢献する行動や価値観が、成功のカギであることが組織心理学により明らかにされつつあります。

 今回コラムでご紹介した3タイプは、職場の環境、文化・風土によって時々刻々と変化するものです。私自身は、元々ギバーだった人が消耗の果てにテイカーに転身してしまうギスギスした職場や世の中ではなく、ギバーが評価されて成功していけるような社会や組織作りを目指していくべきと考えています。現在のストレスチェックの法定項目である「周囲“から”のサポート」だけでなく「周囲“へ”のサポート」がもっと評価される社会・組織作りが求められます。

(2017/9/14)

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