EAPコンサルタントのコラム2017年10月(vol.93):
広島東洋カープに学ぶチーム力! ~組織を強くする「信頼」とは~

 

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弱小からリーグ連覇へ

 2017年9月、プロ野球セ・リーグで広島東洋カープ(以下、カープ)のリーグ優勝が決定しました。ファンが歓喜しメディアも賑わいましたが、昨年の優勝が25年ぶり、連覇に関しては実に37年ぶりとのこと。ここ数年でやっとスポットライトが当たるようになったものの、華やかなビールかけの裏側には、長いトンネルがありました。

 しかし一体、長年下位に留まっていたカープが、どのようにして連覇を成し遂げることができたのか?強くなった秘訣は何なのか?負けが続く時代からカープを応援してきた私にとっては、この話題を語り始めたらキリがありません・・・しかしここは贔屓目なしで、その過程を心理学的に紐解くことで、強い組織作りのヒントを探ろうと思います。

助け合いとリスペクト

 25年ぶりの優勝の原動力となったのは、優勝を花道に引退した黒田博樹投手。2007年から7年間メジャーリーガーとして活躍し、古巣広島に復帰したいわばレジェンド的存在です。そして、同じく2007年にカープから阪神タイガースに移籍した新井貴浩選手。こちらも2015年に古巣に復帰、連覇にも貢献しました。この2人のベテランの力が、カープのチーム力を支えてきたといっても過言ではありません。

昨年の優勝後の会見で、黒田投手はこう述べています。

差し出がましいが、僕たちが同じ野球観を持っていたから、チームとしてまとまることができたのかも知れない。

大事なのは助け合う気持ち。

チームは基本、同じ方向を向かなければならない。

互いをリスペクトし、言動や態度には注意を払う。

最年長の僕たちが、タッグを組んでそれを実行してきた。

 助け合いと、互いへのリスペクト。それぞれ20年余りのプロ野球人生の中で別々の経験をしてきた2人が、同じチームで同じ野球観を持っていたことが、チームを引っ張る力になったと言えるでしょう。そしてたくさんの若手選手が、その背中を見て育ってきたのです。黒田投手の抜けた2017年の試合でも、ピンチで打たれてしまった投手を、他の選手が肩を叩いて励ますシーンが印象に残りました。

同じ方向を目指す

 ベテラン勢が価値観を共有し同じ方向を向く。これって、組織の中では結構難しいことだったりしますよね。経験値が多くなればなるほど、誰かに助けを求めたり、協力を仰いだりすることに抵抗が出てくることもあります。自分の価値観を誰かと共有することもなく、同じ組織にいても競争意識が勝ってしまい、張り合おうとしてしまう…なーんて、思い当たる経験はないでしょうか。周囲から見ても、ベテラン勢(あるいは管理職)がバラバラの方向を向いていては、何を信じて何を頼ればいいのか分からなくなってしまいますよね。

 そこで、組織を管理する立場であることも多いベテラン勢には、まずチームが目指す方向を明確にすることが求められます。特に若手がメンバーにいる場合、個の評価を求めて頑張りすぎてしまうことがあります。個人プレーに走った結果、チームが上手く回らなかった、というのはよく聞く話です。若手に対しては、チームの中でどのような役割を期待しているかを明らかにする必要があります。

チームにおける「信頼」とは?

 チームが同じ方向を目指すとき、大切とされる信頼関係。でも、そもそも「信頼」とは何を指すのでしょうか。心理学的定義を調べてみると、「他者の意図や行為に対する好意的な期待に基づき、自己の脆弱性をよしとする意図を生じさせる心理状態のこと」…なんだかムズカシイ。ここでは「相手に対してポジティブな期待を寄せつつ、何らかのリスクを負う可能性を認めること」と考えるとわかりやすいかと思います。

 たとえば、1点ビハインドで迎えた9回裏2アウト満塁の場面で、バッターボックスに選手を送ることを想像してみてください。ここで1本ヒットが欲しい!けど、あいつが打ってダメならしょうがない。そう思えることが、「信頼」です。

 信頼は双方向に成り立つのが基本ですので、される側もチームを信じていることが理想的です。ヒット打てなかったら一軍から外されるんじゃないか…と猜疑心に苛まれていては、大事な場面で実力を発揮できませんよね。チームにある、自分に向けられた善意を受け入れること。安心して打席に立てる組織に属していればこそ、伸び伸びとパフォーマンスを発揮することができるのです。

 しかも、この「信頼」とやらは、不確かでハイリスクな場面でこそ重要な役割を担うのだから侮れません。ピンチのときこそ信頼が大切。ここ一番に大きな仕事を任せられるかどうかはチームから個への信頼によりますし、実力を十分に発揮できるかどうかは個からチームへの信頼にかかっているのです。

信頼関係の作り方

 そういうわけで、なにやらチーム力には信頼が必須らしい。でも信頼関係って一体どうやったら築けるの?そして、どんな組織なら信頼関係を構築しやすいの?

この疑問へのヒントになりそうなものとして、「信頼できる上司の条件」を調べた研究があります。日米で同じような研究がありますが、米国では、信頼できる上司の条件に“上司自身が能力が高い人物であること”が強く影響したそうです。しかし、日本人を対象とした研究では少し違っていました。上司の能力が高いかどうかは影響がなく、“自分への配慮があるかどうか”が大きく関わっていたそうです。

 黒田投手が会見で話した「野球観」は、まさにこれに当たります。ベテランでも若手でも、同じチームの仲間として、言動に注意しお互いをリスペクトする。この姿勢こそが、信頼関係の大切な要因になっていたと考えられます。配慮があるから信頼が生まれ、同じ方向を見ることで組織の力が増し、良い結果が生まれたのではないでしょうか。

 職場でも自分より若いとか立場が違うからなどという理由で関係をなおざりにせず、丁寧な言動とちょっとした配慮を心がけてみてはどうでしょう。若いからこそ出てくるアイデアや、立場が違うからこその発見があるかも知れません。

最後に

 絶対的レジェンドが引退した後も、消えることのないカープのチーム力。互いへの配慮を忘れず信頼関係を築き、同じ方向を目指すという、目に見えないけれど何よりも強い結束力が連覇を導いたと言えます。磨き上げられたスーパースター1人の活躍より、荒削りでも全員がチームを信頼している組織の方がずっと強い…そう感じられたリーグ連覇でした。カープのチーム力を自分の職場に生かすことができれば、組織はグッと強くなるはずです。

(2017/10/16)

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