2010年2月(vol.07):職場の自殺予防

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職場の自殺予防

平成11年以降、日本の自殺者数は毎年3万人を超え、平成21年も11月時点で自殺者が3万人を越えたという事実が発表されました。これは、交通事故死亡者数の約6倍にものぼります。また未遂者は既遂者の10倍以上はいると推定され、毎年約30万人(1日約1000人)もの人たちが自殺を図っていることになります。更に関係者への影響も考えると他人事として無視はできず、深刻な社会問題として早急に対策を取らなければならない事態となっています。※1

自殺は、自らが命を絶ったとはいえ「本人が選んだ死」とは程遠く、多くが社会的要因によって「追い込まれた死」であることが実情です。特に、労働者の自殺は、過重労働、パワーハラスメント、リストラなど複雑な要因が背景にあります。それらが原因でうつ病やアルコール依存症などの心の病を引き起こし、結果正常な判断能力が失われ衝動的に自殺に追いやられてしまうことが多くあります。

自殺は、社会的支援があれば避けられる死です。それには、職場・家族・社会を含めた本人を取り囲む関係者の包括的な支援や連携が重要となります。周囲が、本人の出すサインに気付き、適切な行動を取ることで、自殺は防げることを念頭に、職場で可能な限り自殺を予防するために、皆様が果たせる役割をお伝えしたいと思います。

自殺前の本人の境遇や、周囲に見せる直接的・間接的なサインはある程度共通している事が、様々な研究によって明らかにされています。まずは、最初のステップとして、周囲が察知すべきサインとリスクを6つ覚えましょう。

1うつ症状

抑うつ感、自責感、疲労感、集中力・決断力の低下、表情が暗い、涙もろい、食欲・睡眠の乱れ、頭痛、めまいなどが見られた場合は、心の病の可能性と同時に、自殺のリスクも念頭に置いてください。

2酒量の増加

一時的に気を紛らわせるための飲酒から、酒がないと生活できず、社会的役割が危ぶまれる状態(酒の臭いをさせて出勤するなど)に酒量が増加した場合は、要注意です。酒に酔うと自制心を失い衝動的に自殺行為に及ぶことがあります。

3安全や健康が保てなくなる

全財産を使い果たすような買い物をしたり、持病のための服薬・通院を止めるなど、後先を考えない自滅的な言動が見られるときは要注意です。

4職場や家庭でサポートがない

独身や離婚者の一人暮らし、単身赴任中は、いざというときに見守る人が傍におらず、最悪の事態になるケースが少なくありません。特に一人暮らしの休職者で状態が不安定な時期は、なるべく実家などに帰るよう、すすめましょう。

5急激な仕事の負担、大きな失敗、失業

過重労働は、様々な自殺要因の中で上位に挙げられます。また仕事一筋の人生を送ってきた人にとって、仕事での大失敗や失業は自己の存在価値を失い自殺の危険性が高まります。

6自殺を口にする

はっきりと「死にたい」と打ち明けられた場合、危険度が非常に高く真剣にその事実を受け止めることが大切です。「仕事を辞めたい」などの間接的表現も自殺を意味する場合があります。うつになりやすい、真面目で勤勉な方にとって、仕事は人生そのものであり「人生を辞めたい」とも解釈できるからです。

※参考文献:中央労働災害防止協会 労働者の自殺予防マニュアル作成検討委員会「職場における自殺の予防と対応」

もし、自殺前のサインを察知した場合は、本人とゆっくり話せる時間と場所を確保しましょう。会話中、自殺をほのめかす内容が出たら、その話題に向き合ってください。自殺の考えを知ると動揺し、どう話せばよいか戸惑ったり、自殺に焦点を当てると行動を促してしまうのでは、と不安になるため、本人の気持ちを否定し、表面的に励ましたり、話題を変えてしまうことがあります。しかし本人は何らかの理由であなたに打ち明けたのですから、真剣に向き合い、徹底的に聴き役になることが肝心です。何かよい助言をしないと、と思う必要はありません。時間をかけて話を聴いているうちに、本人なりに気持ちの整理がすすみ、自殺への衝動的感情がおさまることはよくみられることです。「自殺をしない」約束や「家に着いたら電話をちょうだい」など、近い未来の約束をするのも抑止効果があるといわれています。

そして、本人の同意を得た上で、早急に家族、関係者に連絡し、身近でサポートするよう働きかけましょう。産業保健体制が整っている場合は、産業保健スタッフと連携し今後の対応を検討していきます。また、本人に専門科へ受診するよう説得しましょう。場合によっては、受診に付き添うことをおすすめします。主治医から直接助言をもらうことで安心して確実に支援ができるでしょう。

毎日顔を合わせ、一緒に働いている仲間だからこそ、普段との違いに気付き、手を差し伸べられることがあります。早急にサインを受け止め、本人の不安な気持ちを理解するために、日頃からの人間関係作りはもちろんのこと、緊急時に関係者とスムーズに連携できる体制を整えておくことが大切です。保健同人社では平成20年度約2万件の電話相談実績と400件のメンタルヘルス研修の実績があります。皆様の職場でも、社員の皆様へメンタルヘルスの知識の付与や、専門家への電話相談窓口の設置など、予防対策と相談体制の整備をすすめていただければと思います。

※1 日本における自殺の概要及び政府が講じた自殺対策の実施の状況についてはこちらを参照してください。http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/index-w.html

(2010/02/05)

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