2010年9月(vol.13):ストレスに強い人は増やせる?

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ストレスに強い人は増やせる?

新入社員の離職率とその損害

今、企業では、新入社員の定着は大きな関心を持っておられるのではないでしょうか。多大な採用コストをかけても、入社数年で転職したり、退職されてしまうと必要な人材育成が進みません。

若年層の新型うつも増加傾向にあり、人事ご担当者様の悩みの種になっているとのご相談を、しばしばお受けします。入社半年で仕事を覚えたての時期にメンタルヘルスの不調で休職すると、人事の方は、その手続きや本人との面談、産業医との連携など、さまざまな作業が増えてしまいます。また、年収400万円の従業員が半年間休職をすると、企業として約780万円のコストがかかるという試算もあります(「MOSIMO」参照)。

採用時にメンタルヘルス不調になりにくい人は分かる?

「ストレスに強い人が、採用の時点で分かるといいんだけどね」

先日、メンタルヘルス研修のお打合せをさせていただいたときに、人事担当の方がおっしゃっていました。詳しくお話を聞くと、現在、採用面接で「学生時代に最もつらかったこと、苦労したことは何ですか」「その時にどのように対処し、結果どのようになりましたか」という質問をしているけれども、どうもうまくいかない。見分けるのは難しい。臨床心理士であればそういうことも分かるのではないかと、相談をしてくださったのでした。

「ストレスに強い人」とは、どのようなことをさすのかをお聞きすると、「つらいことや大変なことがあっても、乗り切ることができるような、ストレスコーピングの力が強い人」ということでした。ストレスコーピングとは、ストレスの元である問題に対して何とか対処をしようとする認知的、行動的な試みとされています(心理測定尺度集III)。

その人事ご担当者様の感触では、「数回の面接と上記の質問だけでは、なかなか学生のストレスコーピングの力まで見抜くことはできていない感じがする」ということ。確かに、このような質問だと、回答する学生も、どのように答えたら企業に対してよい印象になるか分かってしまいますから、事前の面接対策で答えも用意しやすいでしょう。ストレスコーピングについての心理テストや面接は、ある程度目安にはなるものの、新入社員の離職やメンタルヘルス不調者増加の解決にはすぐに結びつかないというのが現状でしょう。

ストレスコーピングの応用術

それでは、この問題についてどのような解決策を考えることができるでしょうか。

実は、ポイントが2つあります。

第1のポイントは、個人のストレス対応力を間接的にあげることです。

採用の場面である程度はストレス対処能力を見ても、入社後に激烈な環境であれば、どのような人でもメンタルヘルス不調になる可能性はあるのですから、職場環境の見直しと周囲のサポート状況を充実させていくことで、これを予防していくことが問題解決の鍵となります。

第2のポイントは、新入社員のストレス対処能力のチェックを「どう活かすか」です。ストレス対処能力のチェックは、採用前ではなく、採用後にこそ活用の場面が広がっています。チェックの結果は、上司やサポートする先輩と共有し、正しく活用すれば、個人にあったサポートをする有力な手がかりとなります。

具体的な方法を説明します。ストレスコーピングには①問題解決・サポート希求(情報収集、計画立案)、②問題回避(放棄・諦め、責任転嫁)、③肯定的解釈と気そらし(回避的思考、肯定的思考、気晴らし)3分類があります。例えば、①新入社員のAさんが問題解決のコーピングに偏っているという傾向があるので、気分転換や仕事の優先順位付け等のサポートを増やす、一方②Bさんは問題回避のコーピングを多く使っているようだという結果があるので、具体的な問題解決のサポートをしていく・・・・など、効果的なサポート方法を選択することができます。

このように、心理学の成果は、採用後の教育や新入社員へのサポートに応用していくことができます。ストレスに強い、弱いを厳密に見極めることは困難です。ですが、傾向をつかみ、それを一つの情報として、新入社員を育てていくことはできます。新入社員のサポートをする時、上司や先輩は自分に置き換えて考えてしまいがちです。自分達の時にはこうだったから、新入社員も同じようにしてもよいだろうと。しかし、年齢も性格も入社した環境も違うため、そのような方法には限界があります。できるだけ相手を知ること、そして相手にあったサポートをしていくことが、今後の企業での人材育成では大切なポイントになると思います。

保健同人社は専門知識を活用し、人を大切に育てサポートするお手伝いをしています。

(2010/09/13)

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