2010年12月(vol.16):モチベーション3.0

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モチベーション3.0

「会社で働く意識」の違い・・・

人事部の方や管理職の方からのご相談の中で「若手社員をやる気にさせるにはどうしたらよいだろうか」「ゆとり世代の社員は、常に受身で自分から動かない」といった声をよく耳にします。財団法人社会経済生産性本部の『会社を選んだ理由』調査を見ると、高度成長期の頃は「会社の将来性」がトップでしたが、昨今は「自分の能力や個性が活かせる」「仕事(内容)がおもしろい」といった自分自身の感受性が重視され、「会社の将来性」はあまり関心を持たれていません。私自身も、新人研修や管理職研修で受講者と話をする中で、個人差はあれ、全体的に40代、50代の管理職と若手社員とでは、「会社で働く意識」が違っているように感じています。

やる気を引き出す、新時代の働き方を考える方法とは

では、社員のやる気を上げるにはどうしたらよいのでしょうか? そんな疑問のヒントになりえるものが、ダニエル・ピンク著の「モチベーション3.0」です。この本は全米で大ベストセラーになり、日本でも多くの雑誌で取り上げられていますが、人の「やる気」をひきだす、新時代の働き方を考えることができる、実に面白い内容になっています。

この本の中で、モチベーションは3種類に分かれているといわれています。

1モチベーション1.0は衣食住を満たすための生物としての基本的欲求に基づくもの。
2モチベーション2.0はボーナスまたは罰金など(アメとムチ)で促されるもの。
3モチベーション3.0は自分の内面から湧き出るようなやる気に基づくもの。

例えば、成果主義といわれる現代の企業文化のあり方は「モチベーション2.0」の域と言えます。しかし、ピンク氏も書いているように「『人間には、活動したい、物事に打ち込みたいという欲求が』あり、『誰かの役に立っている』『日々成長している』と感じながら働きたいと思っていて、このような本質的な欲求『モチベーション3.0』部分を伸ばすことが今後は必要」というのです。

確かに、高度成長期は、給料やボーナスという報酬だけでも従業員のモチベーションを維持することができましたが、「仕事がおもしろいこと」を優先させる若手社員には、成果に応じた報酬を払うことだけでは仕事へのモチベーションが維持できないようになってきたのかもしれません。また、モチベーション2.0と3.0の大きな違いは、2.0の場合、報酬が下がった場合にはやる気も下がってしまいますが、3.0の場合は自身の内側から沸き起こるものなので、持続可能なやる気だということです。もちろん、一定の報酬は必要です。しかし、金銭だけでは人の意欲をあげることにはならないということです。

モチベーション3.0は、自律性、マスタリー(熟達)、目的の三本柱でやる気を促します。この三本柱の中で、ここでは、「自律性」=自主性をとりあげてみます。人は、本来、他人から押し付けられたものでなく、自分で自ら決めたことに対してはおもしろさを感じ、やる気が持続するという理論です。この理論は、過去に多数の心理学実験で実証されています。特に目新しい考えでもありませんが、この理論をマネジメントや社員教育に生かし、業績も好調で社員がイキイキと働いている企業は多くあります。

勤務体制の工夫が、あの大ヒット商品を作り出した

例えば、googleやスリーエム社は、勤務時間の15~20%を自分のやりたいプロジェクトに当ててよいという20%ルール制度を導入しています。今では、どこのオフィスでも見かけるポストイットも、毎日何百万の人が訪れるグーグルニュースもこの時間に生み出されました。また、自主性を引き出す勤務体制は、クリエイティブ職だからこそできるという意見もあり、ルーチンワークでは難しいのではないかともいわれていますが、接客業のようなルーティン業務でも、人材教育の中で、モチベーション3.0を引きだし、スタッフのやる気を持続させている会社もあります。

「スターバックス」では、かなり前からモチベーション3.0を取り入れて、スタッフを教育しています。スターバックスでは、教育の中でもドリンクのレシピなど、品質にかかわるルールは厳しく定められていますが、お客様へのサービスに関するマニュアルは、アルバイトも含めて一切ありません。スターバックスならではのホスピタリティを実現するためには、マニュアルで細かく縛るよりも権限を委譲して、パートナー個々の自主性や創意工夫をどんどん引き出したほうがよいと考えているからです。

また、私がメンタルヘルス研修を担当させていただいた企業の中の一つの工場では、事故を起こさないための休憩時間の取り方や、シフト、工場の中の道具の配置場所などのルールは、すべて従業員で考えて回していくという方法を取っていました。工場の業務自体は、コントロールされていて自由度が少ないとしても、働き方を自分たちで考えることができる自主性を取り入れることで、職場で働く意欲は変わってきます。工場長の話によると、この方法を取り入れてから、事故や不調者が減り、現場でイキイキと働く人が多くなったとのことです。

仕事の内容によっては、「おもしろみ」や「能力を活かせている」と感じることは、難しいものもあるでしょう。しかし、仕事のやり方や勤務体制を決める際に自分の意見を反映することができることで、「自主的にやっている」という気持ちを引きだすこともできるのではないでしょうか? この本の中で、「自由を与えれば怠ける」という観念を少し捨てて、「人間は、本来責任を果たすことを望んでいて、自律的に働くことができる」と考えていくことが必要だと主張しています。

仕事の中で、働き方の中で、職場環境の中で、一人ひとりが自分で考え、自主的に行動できる部分を持つことができる体制づくりをすることが、若手社員の仕事へのやる気を上げるキーとなるかもしれません。

(2010/12/14)

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