2011年3月(vol.18):反省のすすめ ―カウンセリングへのいざない―

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反省のすすめ ―カウンセリングへのいざない―

カウンセリングは「こころの病」になった人だけが行くところ?

ある企業の人事の方とのお話しで、こんなご質問が出ました。

「社内でカウンセリングを気軽に利用するようにすすめているのだけど、なかなか敷居が高いみたいで・・・どうしたらよいでしょうか?(人事の方)」「人事の方はカウンセリングをご利用されたのですか?(私)」「えっ・・・・? だって私は心の病ではないから、受ける必要はないと思います。(人事の方)」「カウンセリングは心の病を治療するのが目的ではなくて、整理できない思いや考えを整理するとことですよ。いわば反省するところです。(私)」「反省ならいつもしますが、別にカウンセラーに謝罪する必要なんてないじゃないですか?(人事の方)」

なんか話が食い違っています・・・・・。

反省とは

昔、テレビのショーで「反省するサル」が話題になりました。みなさんも記憶にあると思いますが、サルが片手をついて謝罪のポーズをするものです。テレビを見ながら「こころから謝っているのではなく、ただのポーズだ」とみなさんも思っておられたと思います。また学校で先生に叱られ、「反省文」を書かされた経験がある方もおられると思います。私も「適当に謝罪すればよい」という気持ちで書いた記憶があります。

さてここから連想される反省の意味は、「あやまる、謝罪する」などといったことでしょう。反省の意味とは本当に「あやまる、謝罪する」なのでしょうか?

「反省」 -大辞泉より-
  1. 自分のしてきた言動をかえりみて、その可否を改めて考えること。
  2. 自分のよくなかった点を認めて、改めようと考えること。

ここから、「あやまる、謝罪する」といった言葉はありません。また「謝罪のポーズをとる」という意味でもありません。ふたつの意味をまとめると、「自分が過去に行った言動を再び思い出して、その可否を判断し、改善点があればその方法を考えようとすること」となると思います。なんだが大層なことになってきました。

「反省」を心理学から考える

ここから少し理屈っぽくなるのでお許しください。心理学的に反省を大雑把に分析します。

まず反省するには(1)「自分の行った言動」を憶える能力が必要です。つぎに(2)「自分の過去に行った言動」を思い出す能力も必要になります。皆様にとっては当たり前のことだと思われると思いますが、この能力は日常生活を過ごすのに重要で基本的な能力です。いわゆる記憶というものです。たとえば何かのヒントがあれば思い出すような軽い物忘れは、憶える能力は大丈夫なのですが、思い出す能力が少々低下していると考えられます。

話を元にもどします。ここからがさらに大切なところになります。さきほどの記憶の次に(3)「可否を判断」する能力、(4)改善方法を考え出す能力が必要になります。

「可否を判断する」能力

「可否を判断する」能力をもう少し分析します。まず「言動の可否」を判断するのですから、A.「自分の言動の結果、今の状況が生じた」という、因果関係を考える能力が必要です。これがないと、どんなに悪い結果になっても「自分の責任ではない」と考えてしまいます。そしてもう一つ、B.「今の状況は良くない」と現状を把握する能力です。周りの人がみな、いくら「大変な状況」だと思っても、本人が「全く問題がない」と思っていれば改善の余地はありません。

「改善方法を考え出す」能力

ここが一番の山場になります。「自分の言動により、今の状況が悪くなった」と理解できたとします。しかし「どういう方法をとればよかったのか」という改善策が、なかなか具体的には出てこない場合があります。たとえば仕事でミスをしたとします。反省として、「注意力が足らなかったから、今後はいっそう注意して・・・」とか「今後は気のゆるみがないように・・・・」という言葉を使いませんか? これは気持ちの面を述べているだけであって、具体的な改善策ではありません。もちろん気持ちの面も大切ですが、原因は「自分の行った過去の言動」ですから、やはり具体的な言動の改善策を立てなければなりません。これは「反省」という作業の中でも一番重要で難しい部分だと思います。

以上を整理すると、反省には、記憶の能力、因果関係を考える能力、現状を把握する能力、改善方法を考え出す能力が必要になることがわかりました。そして「記憶されたものを思い出し→可否判断をおこない→改善方法を考えだす」というプロセスで進むこともわかりました。「サルの反省」や「謝罪の意味での反省文」とは程遠い、大変高度な能力と厄介な作業が必要だとわかっていただけましたか? そしてまた、人間にはこの高度な能力を持っていることがわかっていただけましたでしょうか・・・・。

カウンセリングの場面で

カウンセリングの場面では、反省のプロセスと似たような現象が起こります。

先ず相談に来られた方は、現状に困っていることから話をされます。カウンセラーが「なにかきっかけと感じることはありますか?」とか「ご自分で原因だと感じられるものはありますか?」と聞きますと、ご自分の過去の言動、性格などの話をされます。そして「こういうダメな自分だから、今のような状況になった」と結論づけられます。さらに「自分はダメな人間だからこの状況は変わらない!」と話は膠着します。

しかし辛抱強く話を聞いていきますと、「ダメな自分もあるが、もっと違う自分もある」という話になります。さらに続けると、「ダメな自分だから、今の状況になった」から「困った状況になったので、自分をダメな人間だと思った」と変わってゆきます。すると「自分はそんなにダメではない」という話になり、改善方法を自分から考えるようになります。

カウンセリングのすべてがこのように進むわけではありません。しかしどのような場合でも、カウンセラーができることは、「相談者が自ら振り返ることをサポートすることに尽きる」ことだと思います。いわゆる本来の意味での「反省」をサポートすることだと思います。

カウンセリングは「心の病」になった人だけが行くところ、と思っておられませんか? 日ごろの小さな反省にも有効だと思いますので、どんどんご利用いただけることを願っております。

(2011/03/10)

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