2011年9月(vol.23):リーダーシップを過大評価していませんか?

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リーダーシップを過大評価していませんか?

「最近の若手社員はすぐに諦める。根性がない。すぐに人を責めるわりに自分には甘い。」

最近、人事担当の方とお話をしていると、このようなセリフをよくききます。「最近の若者は…」という言葉はローマの昔からあるといわれていますが、単なる年の差からくる価値観の違いだけが原因ではなさそうです。

企業の抱える若手への悩み

ご相談の中には、入社して数カ月で辞めてしまう新入社員がいた話や、同時期に採用した半数の方が3年で辞めたという話もありました。昔と比べて根性がなくなったかどうかはわかりませんが、長続きしないことは確かに問題です。

企業は、若手社員がすぐに辞めてしまうという状況に危機感を持っています。そして既に、このような現状への対処として、「若手社員を引っ張っていく強力なリーダーシップが必要だ」と考え、管理職へのリーダーシップ研修やコーチング研修の実施、新入社員にはメンター制度を導入、職場環境を改善する…などさまざまな対策を講じています。

しかし、思うように改善につながっていない企業が多いのではないでしょうか?

新入社員や若手社員が辞めてしまう問題にはさまざまな要素が絡んでおり、「管理職のリーダーシップ不足」も確かに要因の一つです。しかし、それだけでは問題は解決しません。今回のコラムでは、見落とされがちな「部下のフォロワーシップ」に注目して考えたいと思います。

フォロワーシップに注目を

フォロワーシップとは、リーダーシップが発揮されるための部下の能力です。「リーダーに従いついていく」「リーダーの能力を補完しサポートする」「自発的に考え、意見を伝え、組織のために行動する」ことなどが挙げられます。

一ツ橋大学の守島基博教授は、「フォロワーに求められる3つの能力」(2008,守島基博)として以下の3点を強調しています。

1リーダーが語っているビジョンの正しさと実現可能性を評価する能力
2選んだ対象へ意図的に努力を集中する能力。コミットする力
3常に批判的にリーダーを評価し続ける能力

フォロワーシップは、組織における問題解決のために、リーダーシップ同等に重要なものです。しかし、私の実感として、若手のフォロワーシップ不足を嘆き、対策として、リーダーシップ強化を行っている企業が多いように感じます。

御社ではいかがでしょうか?

長谷部選手の事例から

フォロワーシップが発揮されたよい事例として、サッカー日本代表の長谷部選手の事例を取り上げます。長谷部選手は試合での活躍にとどまらず、キャプテンとしてメンバーをまとめるすばらしい活躍をしました。

長谷部選手の著書『心を整える 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』(幻冬舎)によると、2010年南アフリカワールドカップの予選、カメルーン戦の前日、長谷部選手は監督を除く代表チーム選手同士のミーティングを行ったそうです。そして、その選手同士の話し合いをとおし、「このままでは負けてしまうという現状認識を共有する」とともに、「監督の立場だったらどのように考えるかを自ら考え実行すること、試合で得点が生まれたときに、1人だけで喜ばずベンチと分かち合うこと」を浸透させることができたとあります。

ここで、長谷部選手がフォロワーとして優れている点は、監督にはできない、「選手だけの自発的」な話し合いの機会を設けた点です。

このときチームに最も必要だったのは、「お互いに批判を恐れコミュニケーションがとれなくなっている選手たちに対し、あらためて同じ意識を共有し、チームとしての結束力を高める」こと。長谷部選手は、「監督だったら」と考え、さらにリーダーである監督にはできない方法で、チームの結束力を高めることに成功しました。まさに、フォロワーシップの発揮されたよい例です。

チームが能力を発揮するために

話を企業に戻しましょう。

どの組織でも、管理職は「チームマネジメント」を役割として担っています。ですから、チームにおける問題を、リーダーシップの欠如と捉えるのは理論的に正しいかもしれません。

しかし、冒頭述べたような「最近の若者」が、これまでの人生で「フォロワーシップ」を習得する機会が少なかったとしたら…。チームの能力が発揮されにくいのは、リーダーの問題だけではないかもしれません。

また、健全な組織とは、リーダーシップとフォロワーシップがバランスよく発揮されている必要があります。一方が極端に劣っていると、もう一方の負担が大きすぎてしまうのは、おのずとご想像いただけるとおりです。

もちろん、今までどおり、管理職としてリーダーシップの能力を伸ばしていくことは必要です。しかし、リーダーシップだけに偏重するのではなく、部下たちのフォロワーシップにも光をあててみてはいかがでしょうか?

「自立的に考え」「管理職をサポートし」「組織を健康で最適な方向に導く手助けをする」メンバーが、御社にも増えていくことを願います。

(2011/09/01)

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