2011年12月(vol.26):問題の認識がズレていませんか ~ハラスメント問題の改善事例より~

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問題の認識がズレていませんか ~ハラスメント問題の改善事例より~

指導が苦痛・・・・

管理職へのコンサルティングを人事部より依頼されるのは、休職・復職される部下がいる場合や、職場で事故があったときなど、管理職に大きな負担がかかるケースが中心です。しかしそれ以外にも、人事担当者が対処に迷い、本人に会ったうえでアドバイスしてほしいという場合があります。今回は、後者のケースでした。

人事担当者のお話によると、管理職のAさんはパワーハラスメントをしている疑いがあり、これまでに複数の部下がメンタル不調により休職しているとのことでした。これまで私が相談を受け、対応についてアドバイスをしてきた方々の中にもAさんの部下が何名かいらっしゃいました。

Aさんの指導は仕事上の些細な注意から始まり、数時間から半日にわたる説教、最後は「そのような説教をさせることでAさんの貴重な時間を奪った」と非難して、責任を問うという流れだったようです。部下は口をそろえて「仕事の結果が同じでも、やり方がAさんとほんの少し違うと叱られ、最後には人格を否定され、存在を否定される。毎日のように説教で長時間拘束されるので仕事が滞り、そのためにまた叱られる」と言っていたようです。

Aさんの直属の上司の認識では、Aさんはご自身の言葉が強すぎることは自覚しているように見え、その指導法について上司として注意・指導を重ねてきたけれど改善されなかったとのことでした。人事部でも問題と認識して、ハラスメント研修にAさんを出席させるなどしましたが、目に見える効果がAさんの態度に表れることはありませんでした。

本人の自覚と周囲の評価のズレ

そこで、実際にAさんご本人にお話を伺いました。

実はAさんには自分の言葉が強すぎるという意識も、部下がAさんの指導を苦痛に感じているという意識もまったくありませんでした。それどころか、「自分はたまに感情的になることはあるが、時間を惜しまず指導する、熱意ある管理職だ。」という意識をお持ちだったのです。

そして、何人もの部下が休職されている現状については、「本人の資質の問題」「自分は資質の低い部下たちに迷惑をかけられている被害者である」と考えておられました。

自分の行動を振り返る

実は、第三者的視点ではハラスメントのように見えても、ご本人には悪意はなく、Aさんのように一生懸命考えて部下のためにとった行動が空回りしているケースは珍しくありません。

Aさんの場合は、人事経由で呼び出されたことにより傷つき、警戒感をお持ちでした。また、ご自分の指導法に問題はないと信じたいお気持ちもあるようでしたので、まずはその指導方法は否定せず、部下を伸ばしてやりたいというお気持ちのほうに焦点を当てるかたちで話し合いました。

話し合いの中でAさんは、その部下がいったいどこで躓いているのかを理解せず、自分の発想だけで指導をしていたこと、「Aさんの時間を奪った」という言葉では、Aさんの意図は伝わらないことに気づかれました。そしてAさんは、まずは部下の言い分にじっくりと耳を傾けて、どこがわかっていないのか十分理解するように努めてみることや、伝えたいことが正しく伝わる言葉を選ぶ必要性について、じっと考えておられました。

その後、Aさんの了解を得て、人事担当者、直属の上司に、面談で明らかになったことをお伝えし、「Aさんに対する社内での効果的な支援の在り方」についてご相談させていただきました。

「与える」対応と「引き出す」対応

同じ出来事でも、人により問題のとらえ方が違っていることはしばしばあります。

Aさんのケースでは、部下やAさんの上司、人事担当者はAさんの指導方法が問題だと思い、Aさんご自身は、部下の問題だと考えていました。そのズレがあったため、Aさんへの働きかけはなかなかうまくいきませんでした。

お互いに「何を問題と考えているのか」がズレたまま対応をしても、思うような効果は出ないものです。

研修に出席させる、個別で指導をするといった“与える”対応ももちろん必要なものですが、手を尽くしても問題を解決できなかったとき、もしかすると、当事者の思う「問題」と、担当者の考える「問題」とにズレがあるのかもしれません。どんなに「問題」が明らかであるように感じられても、改めて当事者が何を問題と考えているのかよくよく伺い、引き出し、それから対応を練ることも、大切な対応の一つです。

“与える”対応と“引き出す”対応を使い分け、より効果的に解決をしていきましょう。

※Aさんの事例は、実際のご相談をもとに、本質を損なわない程度に改変したものです。

(2011/12/07)

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