2012年3月(vol.27):「イマドキの新入社員」と「企業の求める人材像」のギャップ

 

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「イマドキの新入社員」と「企業の求める人材像」のギャップ

最近、人事担当者や管理職の方から「最近の新入社員はとても素直だけど自ら動こうとしない」「あまり、自分の意見を言わないので何を考えているのかわからない」といった声を聴くことが多くなりました。いつの時代も「若手は何を考えているかわからない」と言われるものですが、「イマドキの新入社員」と「企業側が新入社員に望むこと」には実際ズレがあるようです。

強みは「責任感」。自信がないのは「独創性・コミュニケーション能力・行動力」

ソフトバンクヒューマンキャピタル株式会社が行った2011年度新入社員意識調査によると、自分の強みを「責任感」とあげる割合が最も高く、次に「誠実さ」「協調性」と続いています。一方、自分の弱みについては、1位が「独創性」、2位が「コミュニケーション能力」、3位が「行動力」という結果でした。つまり、新社会人の自己分析では、自分には「責任感」はあるものの「独創性」「コミュニケーション能力」「行動力」が足りないと感じていることがわかります。

では、企業側はどのような人材を求めているのでしょうか。

独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「入職初期のキャリア形成と世代間コミュニケーションに関する調査」によると、新入社員の問題として「指示されたことだけでなく自ら考え行動することができない」をあげる企業が最多でした。そして、今後育成・確保することを重視する人材としては「自ら考え、行動することができる人材」を選んだ企業が78%で一番多く、若手人材の採用においては「コミュニケーション能力が高いこと」を重視するという企業が最も多いという結果でした。

上記はいずれも2011年1月~3月と非常に近い時期に実施された調査であり、新入社員の能力と、企業が求めている人材とが矛盾していることがあらわれています。

コミュニケーション能力が重視される理由

私は、このような調査結果を見ながら、ある出来事を思い出しました。米国に留学していたときのことです。

ある授業で、他のクラスメイトは次々に発言をしていたのですが、私は言語の壁もあり、一言も言葉を発せずに授業を終えました。その時、先生にこう言われました。「あなたは、授業の間1度も自分の考えを周囲の人に伝えようとしなかった。それは、授業に出席しているとはいえないから、今日の授業は欠席扱いにします」と。ショックを受けた私が「まだ英語力に自信がなくて・・・」と言い訳をしたところ、「私には、自分の意見をみんなに伝えていく主体的な姿勢があなたに見えなかった」ときっぱり言われました。

改めて考え直してみると、その授業には、私以外にも英語を第1言語としない中国や韓国の留学生がいましたが、拙い英語でも必死に自分の意見を伝えていたことに気がつきました。

その時に、私は「世界では、自分の考えをきちんと発信していかないと存在すら認めてもらえない」ということを痛感しました。振り返ってみると、この留学中の経験は、「受身ではなく、とにかく主体的に考えて発信をしていく」という現在の自分の働く姿勢に大きな影響を与えてくれたと思っています。

日本の学校教育を補うもの

イマドキの新入社員が「行動力」や「コミュニケーション能力」に自信が持てない要因の1つには受身型の日本の教育が大きく関係しているように感じます。日本の学校では、小学生の時からほとんどの授業において、講師である先生の説明を聞くという形式です。先生の授業を黙って聞いていることを「良し」とする教育を受けてきた新入社員が会社に入っても「指示待ち」になってしまうのはいたしかたないのかもしれません。

このような現状を受けて、企業が必要としている人材を育てるための教育の取り組みとして、2006年から経済産業省が提唱しているのが「社会人基礎力」育成です。

「社会人基礎力」とは社会人として活躍するために必要な能力を「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」という3つの能力と、それを作る12の能力要素だと定義し、ゼミや授業などの教育活動を通して「主体性」「行動力」「コミュニケーション能力」などの育成・評価を進めるためのモデルプログラムの研究・開発を行っています。

経済産業省の「社会人基礎力育成のススメ」の中では、「社会人基礎力」は日本だけではなく、すでに先進的な諸外国では1980年代・1990年代からその能力定義を図り、教育界と産業界が連携して能力育成に乗り出しているとあります。

知識の習得がはるかに容易となった中「すでに確立された知識体系に精通している人材」ではなく「既存の知識体系を見直す、若しくは組み合わせを変えて新たな価値を創出し、それを実践できる人材」こそが求められるのは世界全体の課題であり、グローバル社会の中で日本が結果を出すには、「人とつながりながら、自分の頭で考えたことを行動に移していくことのできる社員」の存在が必要不可欠なのは明らかです。

一方で、従来は家庭教育、学校教育、地域教育などを通じて豊富にあった「社会人基礎力」習得の機会が、少子化・核家族化、暗記型教育、地域コミュニティの崩壊などにより非常に少なくなっています。その上で、社会人基礎力とはそれ単体だけで能力を発揮出来るものではないことから、従来の基礎学力の維持をも担うべき教育機関だけでは十分な取組みは難しく、若者、学校、企業がそれぞれのメリットを理解して協働して取り組むことが不可欠と伝えています。

企業が取り組む課題としての新人教育

経済産業省がシンポジウムなどを開き、「社会人基礎力」の概念と育成の積極性をアピールしているため、人事ご担当者様はよくご存知かとも思いますが、一部の大学では「本来の知識教育から遊離した就職活動のための一過性の取組み」となってしまうなど、正しく理解されていない場面も見られています。現時点では、企業が新入社員に対し、入社時点での「社会人基礎力」を補い、さらに伸ばしていくための教育も必須と言えるのではないでしょうか。

経済産業省の大学教育の変革への取り組みに期待を寄せながら、多くの企業が若手社員の「社会人基礎力」を伸ばす取り組みをしていくことが日本の未来を明るくしていく大きな力となるかもしれません。

(2012/03/12)

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