2012年12月(vol.35):自殺の少ない町【旧海部町】

 

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自殺の少ない町【旧海部町】

「平成の大合併」といわれた、政府主導の市町村合併を覚えていらっしゃいますでしょうか。合併のピークとなった2006年、私は徳島県の心理カウンセラーとして県下一円のメンタルヘルスに関するご相談を受けていました。合併の時期が異なる場合もあり、変更となる町名を覚えるのに苦労した思い出があります。

この年、市町村合併で旧宍喰町・旧海南町と合併し、海陽町となった町が旧海部町(以下、海部町)です。車でドライブに出かけたことがありますが、海がきれいでとても爽快な気持ちになったことを覚えています。最近私は、自殺の少ない地域について行われた研究を調べる中で、海部町が、日本でもトップクラスの自殺率の低さを誇る町であることを知りました。

犯人探しだけでなくモデル探しも大切

自殺対策でも最初は自殺率が高い地域が注目されました。確かに、自殺の多い地域の対策を検討することは重要ですが、改善のためにはモデルとなる自殺率の低い地域の特徴を知ることが大切です。良いモデルから知見を得ようとするこの研究を、私はとても有意義なものだと感じます。

企業でメンタルヘルス対策を行う時にも、メンタル不調者に注目して改善を目指すことは定石となっています。不調者を放置すれば、悪化するのは当然のことですから、何も間違ったことではありません。ただ、不調者に目を向けるときに、先の研究と同様に、原因だけでなく改善のモデルとなるような従業員や部署にも目を向けることが肝要です。

上手くいっている対処を参考にして、対処のモデルとする手法は、「モデリング」と呼ばれ、心理療法の技法としても用いられることがあります。もちろん、上手くいっている要因には真似のできないようなものもあるでしょうが、一般化できるものや、見習えるものが見つかることも多々あります。

健診時ストレスチェック法制化の動向が気になる昨今、ストレスチェック実施のご要望も増えております。結果をどう活かすかと考える時に、悪いモデルばかりに焦点を当て、犯人探しを行うことはお勧めできません。同じ会社の中でも良い対処モデルを探し、なぜ上手くいっているのかを会社全体で共有してみてください。不調者や不調部署がモデルとできるようなフィードバックがお勧めです。

風通しのよい職場と組織

海部町は日本の全市区町村に共有されてよいモデルと言えます。では、なぜモデルに成りえたのか。それは風通しのよい地域コミュニティーを実現できたからにほかなりません。
排他的な傾向が弱く、新参者でも政治参加しやすいこと。リーダーを学歴でなく問題解決力で選ぶ傾向が強いこと。人間関係が固定されにくく、干渉し過ぎないゆるやかなつながりが保たれていることなどがその要因として挙げられています。全国的にも、海部町のように、山林や湖などを除いた、居住可能地域の人口密度が高く、医療機関など社会福祉資源へのアクセスがよい地域は、自殺者が少ない傾向にあります。風通しのよい環境があるため、援助を求めることへの抵抗が少なくなることも早期受診に繋がっているようです。

これらは、国の自殺予防に役立つ要因として考察されていることですが、会社組織、職場におけるメンタル不調者の予防にも同様のことが言えるのではないでしょうか。
風通しの良い職場では、専門家への橋渡しがスムーズに行われることが多く、不調者の早期発見、早期対処が実現し、企業の生産性向上に寄与するメンタルヘルス対策のモデルとなりやすいものです。

皆様の職場、組織の風通しはいかがでしょうか。貴社の風通しをよくするために、EAPコンサルタントとしてお役に立ちたいと思います。ご要望がございましたら、ぜひお問い合わせください。

【参照文献】
岡 檀・藤田 利治・山内 慶太(2012)日本における「自殺希少地域」の地勢に関する考察 『厚生の指標 2012年4月号』

(2012/12/17)

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