2013年5月(vol.40):その不調、本当にメンタル不調ですか?-こころとからだはひとつ-

 

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ある時、人事担当者からの依頼で私がお目にかかることになったのは、うつ病でしばらく休職しておられたAさんでした。先日、復職はしたものの、覇気がなく日中もぼんやりしがちで、仕事をこなせるようにならないという話でした。

本人から詳しく話を伺うと、休職して療養に専念したことで、うつ病の症状はおおむね回復しているものの、睡眠障害だけがどうしても改善せず、そのために仕事に支障が出ているとのことでした。薬を変えたり、生活習慣を見直したり、心療内科の主治医と相談して様々な工夫を試みているものの、なかなかうまくいかない様子でした。

色々と状況を伺った私は、本人の了解を得て、保健師にアドバイスを求めました。というのも、私には睡眠障害がメンタル不調からくるものではないように思われたのです。

保健師からは睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性が示されました。私からAさんに耳鼻咽喉科の受診を提案し、心療内科と並行して治療を受けたAさんの体調は少しずつ改善し、やがて、仕事でも再び力を発揮されるようになりました。

同様に、うつ病を罹患し、休職こそしていないものの長い間、就業制限をつけて働いている方のケースもありました。その方はうつ病からは回復したと主治医から太鼓判を押されていたものの、よく眠れず、目覚めも悪く、冷えや疲労感などの不定愁訴に悩まされていたため、会社の判断で就業制限を続けていたのです。

その方は確かに体調は悪いのですが、月曜が特に悪いとか午前中が特に、といったメンタル不調にありがちな波はなく、終日、体調は思わしくないようでした。また健康のためにと野菜中心の食生活を送り、肉や魚をほとんどとらず、体調の考慮から休養を最優先にし、少しでも疲労を感じたら横になるように心がけておられました。また、平熱が低くなっていることも分かりました。

こうした情報を保健師と共有し話し合ったところ、その方の体調不良はうつ病による症状ではなく、生活習慣の乱れによるものかもしれない、という意見が出てきました。保健師や管理栄養士からのアドバイスを受け、その方は主治医や私たち心理専門職と、その時々の体調について話し合い、うつ病の再燃には注意を払いながら、体を動かしたり栄養バランスの整った食事をとったり、生活習慣をそれまでとは大きく変えて、体調を調えていきました。

それまで持病がなかった方は特に、復職後の体調不良をメンタル不調からくるものと考えてしまう場合があります。しかし実際には、メンタル不調とよく似た症状の、身体疾患・身体的な不調がある場合も少なくありません。

EAPといえば「メンタル不調」「心理専門職が対応」というイメージがあると思いますが、弊社のEAPグループには保健師や管理栄養士が在籍しており、必要と判断した場合にはケースの共有を行い、心身双方向からのアプローチを心がけています。保健師や管理栄養士からアドバイスを受けられるEAPサービスは、日本では珍しいのが現状です。しかし実際のところ、こころとからだは健康の両輪。メンタル不調者のフォローと言えども、心理専門職の支援のみで十分とは言い切れません。

EAPに、心身双方の専門家がいることが当たり前になっていけば、不調者はもっと減って、安全衛生部門の負担も人事総務の負担もぐっと減るのでは。そう思う今日この頃です。

※事例の内容は本質を損なわない程度に改変しております。

(2013/5/14)

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