2013年7月(vol.42):近くて遠い海外

 

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近くて遠い海外

娘と私と携帯電話

今年6年生になった娘のために携帯電話を買いました。この頃はメールも使えるようになり、帰宅時や遊びに行く際には、「ただいま」「行ってくる」と短いメールが届くようになりました。それまでは帰宅したら、自宅から電話をするのが我が家のルールになっていました。仕事の都合に関係なくかかってきますし、つながらないと何度もかけて、と不便なことも多いのですが、電話連絡ついでに繰り出される「きょうね・・・」というホットストーリーを聴ける貴重な時間でもありました。

海外赴任者が直面する一番の問題は?

話は変わりますが、海外赴任者に聞いた「業務上、直面する問題」に関する調査結果の第一位はどんなことがご存じでしょうか。それは「日本本社の現地への理解不足」です。「海外生活への適応」以上に、「日本の本社がストレス源」というアンケート結果もあります。現在、海外赴任者数は約24万人。グローバル化がいわれて早や10数年、海外赴任者の数そのものは10年前と変わりませんが、アジアを筆頭に赴任先は多方面に及び、製造業をはじめあらゆる業種で行われるようになりました。

今や、電話はもちろんのこと、メールやスカイプなど様々なツールが活用でき、テレビ電話システムにより、海外にいながらにして、日本での会議に参加することもできます。物理的な距離に関係なく、リアルタイムでコミュニケーションができる便利な現代にあって、お互いの距離が縮まらないのはどうしてなのでしょうか。

「OKY」という言葉があります。「お前が来てやれ」の略で、現地を理解しない本社を揶揄した、海外赴任者の合言葉だそうです。めまぐるしく変化する海外事情や海外特有の意思決定スピードを肌で感じながらもうまく伝わらないまま、国内尺度で考えた無理難題と現地との板ばさみ。便利なツールを駆使して、必要な「情報」は行き来する一方、それに伴う「赴任者の思い」はおいてきぼりになってしまうこともあるようです。OKYには、そんな行き場のない、諦めや怒り、空しさがこめられているように感じます。昨今話題になっている海外赴任者のメンタルヘルスの問題にも、こうしたディスコミュニケーションは影響を及ぼしているように思います。

心の距離は自分次第

対面と電話やメールは、言語・非言語的な情報量が大きく異なることは周知の事実です。しかし、私たちは日頃のコミュニケーションにおいて、そのことをどのくらい意識しているでしょうか。実際に会って話すときの表情、しぐさや息遣いは、2D画面のテレビ電話や関係者間の一斉メールで感じることは難しいものです。当社の電話・WEB相談窓口でも、相談員は、対面以上に神経を使いながら、ご相談者のお話を伺います。チャンネルが極度に少ないことを常に自覚し、その限界を踏まえて、電話なら全身を耳にしてお聴きしますし、WEBならすべての行間を、目を皿のようにして読み取ろうとします。

コミュニケーションとは、そもそも手間のかかるものですし、それでも誤解はゼロになりません。便利なツールであればあるほど、それを少しでもお互いにとって有意義に活用するには、「+マメさ」が必要なのだと思います。会って話すのが無理なら、やりとりの回数を増やしたり、あえて言葉でたずねてみたりと、相手を理解しようとしていることが伝わる、マメな気遣いをどれだけ他のツールで駆使できるかです。人事のみなさんであれば、まずは健診連絡などの機会をきっかけに、体調や最近の生活などを話題の切り口にしながら、少しマメなおつきあいをしていただくのもひとつです。海外赴任されている方も、会社とのつながりを感じられるひとときとなるのではないでしょうか。

気軽に海外に行けて、連絡も簡単にできる時代だからこそ、つい錯覚をおこしがちですが、海外は海の向こう、顔の見えない世界です。でも、心の距離は自分の気持ち次第で近くも遠くもなるはずです。

娘と私のその後

その後、娘との連絡は、娘の帰宅に合わせて、「おかえり。今日はどうだった?」と私から先にメールをすることにしました。この工夫でこれまでどおりの「ただいま+α」を楽しめるようになりました。

そもそもコミュニケーションツールは、「便利」を追求するだけでなく、“もっといろんなことを共有したい”、“相手をもっと知りたい”という気持ちから生まれたものなのではないかと思います。みなさんも、便利なツールをより上手に活用するために、これまでのコミュニケーションを一度見直してみるのはいかがでしょうか。

(2013/7/12)

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