2013年9月(vol.44):物事の捉え方を変えて自分を変える

 

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物事の捉え方を変えて自分を変える

日々のカウンセリング業務では、来談者からさまざまな相談を受けています。「性格を変えたい」、「他人は変えられないから、せめて自分を変えていきたい」、「自分の感情をコントロールできるようになりたい」といったことも聞かれます。もし、これらの希望が容易に叶えられたとしたら、悩みも少なく楽に生きられるのでしょうが、人生そう簡単にはいきませんよね。

そんなときに私はどのようにカウンセリングを進めていくかというと、多くの場合、アメリカの臨床心理学者アルバート・エリスによって創始された論理情動療法(認知療法の一種)を活用します。人の悩みというのは出来事そのものではなく、その出来事をどう受け止めるかによってつくられるという考えです。簡単な例を挙げると、コップに半分の水が入っている事実を「ラッキー! 半分‘も’水がある」と考えて安堵するか、「半分‘しか’水が入ってない・・」と不安がるかは、その人の解釈しだいということです。

創始者であるエリス博士は2007年に逝去されるまで40年以上もの間、米国ニューヨークにあるエリス研究所で、毎週金曜の夜に自らライブのデモカウンセリングセッションを行い、多くの心理学者や臨床家の卵に観覧させ学ぶ機会を与えました。私も大学院留学時代は何度も金曜の夜に通い、目の前でどんな悩みも論理情動療法の理論で、あれよと解決していく知的でユーモアに溢れるエリス博士のカウンセリングの進め方に圧倒され、感激した思い出があります。

その説得力の強さは、エリス博士自身の人柄と経験からきていると考えます。彼は若い頃、極度にシャイで、人前で話すのはもちろん、異性と会話をするなんてもっての外だったそうです。そんなエリス青年が自分に課した宿題が「1ヶ月間、毎日公園のベンチに座り、隣に座った異性に話しかける」ということでした。何度も自分の内気な考えを捉え直して実践した結果、1ヶ月で話しかけた130人の女性のうち30人はすぐにその場を立ち去ったそうですが、“人生で初めて100人‘もの’女性と会話できた”とのこと。内容も鳥や花や本など多岐にわたった話ができたそうです。

物事の捉え方を変えると考えが変わる、考えが変わると感情が変わる、感情が変わると行動が変わる、行動が変わると習慣が変わる、習慣が変わると性格が変わる、性格が変わると自然と物事の捉え方が変わる・・。これを地道に繰り返し続けて実践した結果、いつの間にか自分が変わっていく。冒頭に挙げた来談者のような希望を叶える一つの方法ではないかと思います。

事実、私もこの反復トレーニングにより、自分の考え方や性格に変化が現れてきたと実感しています。私が最近、個人的にはまっている趣味のトレイルランニングと言われる山岳を走るスポーツは運動量が多く、特に登りばかりの足場の悪い山道を走る際は過酷でしんどいことばかりです。「なぜこんなことやっているんだろう・・、山なんて来なければよかった・・、家でゆっくりゴロゴロすればよかった・・」という心の声が何百回と生まれてきて、それを打ち消すことに苦労します。そんなとき、エリスの理論を思い出し、「こんな苦しいチャレンジをしている私ってすごいかも! これを登りきったら景色が素晴らしいだろうな!」と捉え方を変えて、その場のネガティブな気持ちをだましだまし緩和させようとします。そうすると不思議なことに、これまで眠っていたパワーが沸いてきて、時に自分の想像を超えるパフォーマンスを発揮することができます。プロのトレイルランナーである鏑木毅さんは「楽しむ勇気」という言葉をモットーにされています。これは大変な状況にぶち当たったときに、「楽しい」と発想を転換させるのはもちろんのこと、困難を楽しみに変える「勇気」を持てば、どんな過酷な山道でも立ち向かえるというメッセージとして、私を含め多くのトレイルランナーの心の支えになっています。

自らトレイルランニングを通してエリスの理論を実践することで、それがただの机上の空論ではなく、すこし変われるかもしれないという希望をカウンセリングの中で間接的にでも来談者が受けとってくださるといいなと感じています。

(2013/09/12)

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