2018年6月(vol.101):ワークライフバランスを狂わすラスボス! ゲーム依存が病気になる!?

 

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新生活にも徐々に慣れ始めるこの時期、暇つぶしにスマホゲームでもやってみるかと始めた方もいるのではないでしょうか。ただ、ゲームをしていると、ついつい時間を忘れてしまいがち。私がコンサルタントを担当している企業では新入社員が入社早々に遅刻、「どうなっているんだ!?」と聞いてみると、「地元の友人とオンラインゲームで一緒に遅くまで遊んでしまって…」という理由だったとか。今回のコラムでは、ワークライフバランスを狂わすゲームへの依存をテーマにしたいと思います。

ゲーム依存は世界的な課題

みなさんは、ゲームへの依存を世界保健機関(WHO)が病気とする方針であることをご存知でしたか。日経新聞は2018年1月6日付で「世界保健機関(WHO)報道官は5日、オンラインゲームやテレビゲームのやり過ぎにより日常生活が困難になる症状を新たな疾病として定義し、WHOの「国際疾病分類」に加える見通しだと明らかにした」と報じています。「国際疾病分類(ICD)」は、世界中の医療従事者や研究者が診断や調査に用いている分類で、2018年に改訂版が公表される予定です。

記事の中では、WHOの期待として、各国政府が予防や治療、患者の社会復帰に関わる対策を決める際の考慮に役立つことを挙げています。今や世界的な課題となっているゲームへの依存を「ゲーム障害」という名前で疾病として取り扱うということですが、その特徴や診断の基準が気になるところです。

WHOでは「ゲームをしたい衝動が抑えられなくなり、日常生活など他のことより優先、健康を損なうなど問題が起きてもゲームを続けてしまう」ことが特徴で、「こうした症状が少なくとも12カ月続き、家族や社会、学習、仕事に重大な支障が起きている場合、ゲーム障害として診断できる」と説明しています。先ほどの新入社員のような場合も、仕事に支障をきたしているので、1年以上続くようなら「ゲーム障害」の診断書を会社に提出して、治療が始まることになるのかもしれません

たかがゲームとあなどるなかれ!

では、人はなぜゲームに依存するのでしょうか。ゲームへの依存はさまざまな依存の中でプロセス依存に分類され、アルコールやタバコのように特定の物質に対して身体的に依存するわけではありません。プロセス依存の対象としては、ゲーム以外にもギャンブルや買い物などがありますが、いずれも行為の過程に依存しているといわれます。

ゲームを行うと、脳内にアドレナリンなどの神経伝達物質が放出されます。間に休憩を取ったり、頻度が高くない場合は、ゲームの刺激によって求める爽快感や充実感を得られます。しかし、長時間、高頻度になっていくと刺激に慣れてしまい、神経伝達物質が放出されにくくなってしまいます。その結果、それまでのプレイ時間や頻度では快感が得られなくなり、どんどん長時間、高頻度になるという悪循環に陥ります。ゲームのプロセス依存は、こうして形成されるのです。

ゲーム依存を予防するには?

では、ゲーム依存を予防する方法はあるのでしょうか。そもそも、ゲームをしない、苦手などといった場合は心配ありませんが、ゲームが好きな方は無理のない範囲で遊ぶ時間や頻度を考えることが予防につながります。

具体的に、「待ち合わせの合間に遊ぶようにする」「外出など遊ぶことを止めざるを得ない予定を入れておく」などと自分でルールを決めてもよいでしょう。また、普段からできるだけ多くの趣味や多様な人間関係を築いておくことが、ゲームだけに行動を偏らせないための予防策になります。

ゲームは、あくまでも楽しみを得るための道具のひとつに過ぎません。道具に使われるのではなく、人が道具を使うという意識を持つことが大切です。日ごろ、ゲームに生活が左右されていると感じるようなら、依存に陥っていないか一度確認してみてください。

研究発表から15年を経て…

筆者は保健同人社の社員であると同時に、ゲーム依存の研究にも携わっています。きっかけは、大学院時代にある中学生の不登校に関わったこと。当時、臨床心理学の領域で日本初のオンラインゲーム依存に関する調査研究の論文を執筆し、学会やネット上で研究成果を発表したことで、中国や韓国からも注目されました。

約15年が経ちましたが、日本では久里浜医療センターが中心となって国際シンポジウム等を開催してきました。医療従事者や研究者を中心に啓発を続けた成果が、今回のWHOの判断につながったのではないかと思います。ワークライフバランスが重視される昨今、研究者としては、さらなる知見の積み重ねによって、ゲーム依存という名の「ラスボス」(=強敵)から1人でも多くの方が救われることを願ってやみません。

(2018/6/14)

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