2018年7月(vol.102):一寸先は光か?闇か? ~テクノロジーの発展が職場にもたらすもの~

 

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テクノロジーの発展により業務が効率化されて、未経験でもできる仕事が増え、在宅でもよいということになれば、誰にでも就労の機会が与えられます。まさに一億総活躍社会であり、働き方改革です。でも、それだけで大丈夫でしょうか?働き方改革と両輪を成す、健康経営の進め方について考えてみました。

テクノロジーが世界を変える

近年、テクノロジーの発展がめざましいですね。いまや老若を問わず所有しているスマートフォンは、世に出てからまだ10年ほどしか経っていないのに、私たちは当たり前のようにその便利さを享受しています。コンピューターの処理速度に関わる半導体の性能は1年半で2倍のペースで向上し(ムーアの法則)、2045年にはコンピューターが人間の知性を超え、テクノロジーが無限大の加速度で進化する(技術的特異点)という説もあるように、少し先の未来でさえ想像がつかない時代に直面しています。

エクスポネンシャル・ジャパンの共同代表を務める斎藤和紀氏は著書の中で、テクノロジーの発展は指数関数的に進行し、緩やかに始まり徐々に加速していくと述べています。AI(人工知能)、ロボット、VR(ヴァーチャル・リアリティ)技術などは、しばしばメディアに取り上げられますが、まだまだエンターテインメント性が強く、「実用にはほど遠い」という印象を受けるかもしれません。しかし、性能や使い勝手が劇的に向上し、気がつけば誰もが当たり前のように使っている、そんな時代がすぐに来ることでしょう。

未来の職場環境は?

では、テクノロジーによって、私たちの職場にはどのような変化が起こるのでしょうか? ここで未来予想図を描いてみます。

職場の変化

勤怠管理や財務経理、市場調査や各種進捗管理は全てオンラインで完結するようになり、煩わしいデータの入出力はなくなります。あらゆる文書はデータベース化されるので、保管庫の大半は空っぽです。オンライン会議が主流となり、デスクや自宅、移動中でも参加できます。会議室はいつも空室で、出張も減り、会議時間も短縮されます。もちろん、会議資料や議事録、検索や翻訳などは、音声認識技術により自動で作成されます。
営業経験の浅い従業員でも、AIの指示に従うことで確度の高い提案ができるようになります。業界動向や訪問記録から、顧客訪問にベストなタイミングがわかるので、「足で稼ぐ」必要はありません。製造現場では、ロボット技術や画像認識技術、3Dプリンターによるオートメーション化が進みます。身体的負担や危険物を扱う業務が減り、労災事故も激減。交替勤務(特に夜勤)もなくなります。また、強固な情報セキュリティ環境が整備され、たいていの業務が在宅でできるようになると出社する人は半数程度になります。デスクも3分の1程度は不要になるので、空いたスペースにはコーヒーサーバーやリラクセーションスペースなどが設置され、オフィスではゆっくりと集中して仕事に取り組めるようになるでしょう。

テクノロジーの発展により、私たちは長時間労働、ハードな肉体労働、通勤の満員電車から確実に解放されそうです。上記の一部は既に実現化されており、決して夢物語ではありません。ただ、ここで考えなければならないのが、テクノロジーの発展がもたらすものが果たして光だけなのかということ。利便性や効率化と引き換えに、失ってしまう影の部分はないのでしょうか。

コミュニケーションの効率化にご用心

オランダ・ユトレヒト大学のウィルマー・B・シャウフェリ教授は、仕事に満足感を得ている状態をワーク・エンゲイジメントという概念で定義しています。それによると「活力」「熱意」「没頭」の3要素から構成されるワーク・エンゲイジメントを育む要因として、同僚からの支援や仲間づきあい、上司の関与や建設的なフィードバック、職場の良い雰囲気等が含まれるとしています。つまり、職場でのポジティブなコミュニケーションが、私たちの働きがいや満足感、そして会社への所属意識を高めることにつながるのです。

一方、テクノロジーによる業務の効率化は、こうしたコミュニケーションに対しても効率化に働く側面を持ちます。「フリーアドレス制の採用とともに、上司部下の面談頻度を増やした」という企業事例が複数みられるように、効率化により減少するコミュニケーションの機会を補っていかないと、従業員の労働意欲も会社への所属意識も低下し、かえって生産性が落ちてしまいかねません。そこで、EAPコンサルタントの立場から、コミュニケーションを創出する施策としてお勧めしたいのが健康経営※の推進です。

所属意識を高める健康経営

健康経営は生活習慣病の予防や医療費の削減だけでなく、ポジティブなコミュニケーションを増やし、会社への所属意識を高める効果が期待できます。実際に健康経営の先進的な取り組み事例では、部署対抗で歩数を競ったり、社内SNSを使って全社で禁煙希望者を応援したりするなど、健康増進をきっかけとした新たなコミュニケーションが生まれています。

「会社に行けば健康に過ごせるし、仲間から良い刺激も受けられる。会社は働きやすい環境を提供してくれるし、何だか居心地がいいな。」従業員一人ひとりがそんなふうに感じるなら、テクノロジーの恩恵と相まって、真に生産性の高い職場が実現するでしょう。テクノロジーと人間が調和する働きやすい職場がどのような形で実現していくのか。これから目の当たりにできることが楽しみで仕方ありません。

※ 「健康経営」は、NPO法人 健康経営研究会の登録商標です。

(2018/7/18)

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