2018年9月(vol.104):その配慮は誰のため?

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復職者への対応から考える

少し前になりますが、「忖度(そんたく)」という言葉が非常に話題になりました。私は読み方も意味も知らなかったのですが、辞書で調べるまでもなく、連日テレビで紹介されていました。忖度の意味は、「相手の気持ちをおしはかること」。「おしはかる」とは、「推測する。推量する」という意味ですので、「相手が言っていることではなく、気持ち(真意・本音)を推測する」ということでしょう。しかし、口で言うほど簡単なことではありません。

復職者への対応、どうしていますか?

「忖度」を日常で使う言葉に当てはめてみると、「空気を読む」というのが近いかなと思います。これは目の前の相手に対してだけでなく、会議など複数の人間が参加する場において使うこともあります。空気を読まない(読めない)人のことを「KY」と呼んでいた時期もありましたね。思ったことをそのまま口にできれば誤解も少なく楽ですが、そういうわけにはいかない場面も多々あります。そうした時、「空気を読み」、または「忖度」して発言したり、行動したりします。

私たちはこうした「配慮」を重ねながら日々を過ごしているわけですが、逆に配慮がふさわしくない場面もあるようです。メンタルヘルス研修をしている中で、休職者が復帰してきた時の対応について話題になることがあります。ある研修時に受講者の方から、「休職期間中にどんな状態だったか聞いてもよいか?」という質問を受けました。あなたはどう思われますか? 聞いてもよい、聞いてはいけない、それぞれの考えがあるかと思います。

誤った「忖度」が好ましくない「配慮」に

私はその時、「聞く人にもよるし、聞かれた人にもよる」と回答しました。聞いてきた相手との関係性によって、話してもいいと思う人と、この人には話したくないと思う人がいるのが本当のところでしょう。また、聞かれる側も、相手にかかわらず、話して差し支えないと考える人もいれば、誰にも話したくない、聞かれたくないと思う人がいるなど、人によって違います。

プライベートの、しかも休職中の体調のことですから、興味本位で聞くものではないと考えるのが一般的です。それこそ「忖度」してほしい部分ですが、ご本人の本音は聞いてみなければわかりません。そうした説明をした上で、「聞いてもいいかを尋ねてみたらいかがですか?」と答えました。その際には、ご本人に言いたくなければ無理に話す必要はないことを一言添えるとよいでしょう。

復職者に対しては、勤務時間や担当業務を減らす、社用車の運転を禁止するなど、一定期間は体調面を考慮した業務制限をすることがあるかと思います。ここでも誤った「忖度」から好ましくない「配慮」をすると、順調な復職を妨げてしまう場合があります。上司は復職者に配慮して業務や負荷を軽減して様子を見守っているつもりでも、本人にとってみれば「腫れ物に触るように遠巻きに見られている」「仕事をさせてもらえない」「干されているような疎外感がある」と感じることがあるのです。

なぜ、このようなことが起こるのでしょう。復帰してからの業務について、きちんとした面談による意思確認をせずに、「忖度」「配慮」しているケースが多いのではないでしょうか。参考までに、好ましくない配慮となる可能性のある対応・措置の例を以下に示します。

□休職者に対し、上司が毎日自宅を見舞い、会社や業務の状況を説明した。
□復帰時、全社員の集まる朝礼で復職者に挨拶をさせた。
□召集されていた会議のスケジュールを説明なしで削除した。
□担当していた業務に関係するメールの宛先からアドレスを削除した。
□本人ができると考えている業務まで一切制限し、他に指示を与えなかった。
□復帰後数週間~1カ月以上、メール整理や清掃のみを指示した。または業務制限のみで何も指示をしなかった。

極端な例だと思われるかもしれませんが、対応した方々は復職者・休職者に配慮した上での措置だとおっしゃいます。しかし、当事者は配慮されているという気持ちにはなれなかったそうです。両者の意思疎通がスムーズに行われていれば、もう少し違った対応ができたかもしれません。

配慮は「される方」のために

復職者への対応に限ったことではありませんが、好ましくない配慮は、悪意がある場合を除いて配慮する側の思い込み、または偏った忖度により行われることが多いようです。ちなみに「配慮」の意味は、「良い結果になるように、あれこれと心をくばること」。当然ですが、配慮は「される方」のために行うものです。相手が何を望み、どうすることが良い結果を生むのかが曖昧では、「配慮」どころか「排除」になってしまう可能性さえあります。

復職者の中には、休んでいた間の遅れを取り戻そうと、復帰直後からエンジン全開で働いてしまうケースもあります。いきなり全力で無理をして、再度調子を崩してしまうこともあり、再休職という望まない結果になってしまうことも。復帰後すぐに休職前の業務量で大丈夫と言う方もいるかもしれませんが、特に復帰当初はきちんと相談の上、基本的には業務を制限することをおすすめします。「忖度する」や「空気を読む」などのわかりにくい行動ではなく、きちんと話を聞き、対応することが大切だと改めて感じます。

<追記>
このコラムを書きながら、以前、友人からお付き合いをはじめたばかりの相手について相談を受けたときのことを思い出しました。とても優しい彼とのことでしたが、その優しさが少々ズレていることで悩んでいる様子でした。最初はどういうことか意味がわからなかったのですが、「お腹が空いている時に、コートをかけてくれるような優しさ」と表現されました。「寒いんじゃなくて、腹が減ってんだよってバシっと言ってやれ!」とアドバイスした記憶があります。言わなくても感じ取って欲しいという気持ちもわかりますが、大切な相手なればこそ「忖度」もほどほどに。

(2018/9/20)

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