お知らせ

「新型コロナウイルスに関連した感染症」情報
―新型コロナウイルス感染症の治療薬について―

2020年3月9日版

新型コロナウイルス治療薬の開発動向

政府が2月25日に発表した「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」では、治療法・治療薬やワクチン、迅速診断用の簡易検査キットの開発等に取り組むとしています。なかでも治療薬については、アビガン、カレトラ、レムデシビルの3種類の薬剤を治療薬の候補として観察研究を行うとしており、一部の医療機関で必要な患者に使用を開始し、参加医療機関を順次拡大していく予定です。

日本感染症学会は2月26日に、3種類の薬剤のうち国内で承認されているカレトラとアビガンを新型コロナウイルスに使用する際の留意点などをまとめた暫定的な指針を公表しました。投与対象は、50歳未満では肺炎を発症しても自然経過の中で治癒する例が多いため、必ずしも抗ウイルス薬を投与せずとも経過観察でよいとしたうえで、
①50歳以上で低酸素血症を呈し酸素投与が必要となった患者
②50歳以上で糖尿病・心血管疾患・慢性肺疾患、喫煙による慢性閉塞性肺疾患、免疫抑制状態等のある患者
③年齢にかかわらず、酸素投与と対症療法だけでは呼吸不全が悪化傾向にある患者
としています。

既存薬の転用

新薬を一から開発するとなると、新規物質の発見や創製、有効性や安全性等の研究、治験、厚生労働省による審査と、かなりの時間がかかります。しかし、既存の薬であれば、効果があるかの治験で適応疾患の追加が可能になる場合があり、開発時間が短縮できます。また、インフルエンザやHIV感染症、エボラ出血熱の原因となるウイルスとコロナウイルスは構造が似ており、これらの薬が新型コロナウイルスにも効果がある可能性があるため、現在その検証が国内外で行われているところです。

新型コロナウイルス感染症の候補治療薬
抗ウイルス薬名 適応疾患 特徴 注意点
ファビピラビル
商品名:アビガン
新型・再興型インフルエンザ
  • ウイルスが増殖する際に必要な酵素を阻害して、増殖を防ぐ
  • 日本では備蓄用として2014年に承認済み(200万人分を備蓄)
  • 中国で新型コロナウイルスに対する臨床試験報告あり
動物実験で子どもに奇形が生じることが確認されている
→妊婦や妊娠の可能性がある人は使えない
ロピナビル・リトナビル
商品名:カレトラ
HIV感染症
  • ウイルスが増殖する際、体を構成するタンパク質が作られるのを阻害して、増殖を防ぐ
  • 日本では2000年に抗HIV治療薬として承認済み
  • 中国で新型コロナウイルスに対する臨床試験報告あり
併用が禁止されている薬、併用に注意が必要な薬が多い
→高齢者は使いにくい
レムデシビル エボラ出血熱
  • アメリカで開発中の薬
  • 効果のメカニズムの詳細は不明
どの国でも認可されていない
→どのような副作用等が起きるか未知数

また、この3剤以外にもインターフェロンやクロロキン、吸入喘息治療薬であるシクレソニドなどといった治療薬の候補として検討されつつあり、今後の知見が待たれる。

本日の用語解説

観察研究

医療機関内の倫理委員会等の手続きを経て、患者の同意を得た上で、本来の適応とは異なる投与等を行った治療について、治療結果等を集積し、分析する一連の研究。

新型インフルエンザ

新たに人から人に伝染する能力を有することとなったインフルエンザウイルスを病原体とする感染症。一般に国民が免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの。

再興型インフルエンザ

かつて世界的規模で流行したインフルエンザウイルスを病原体とする感染症で、その後流行することなく長期間が経過しているもの。一般に現在の国民の大部分が免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるとして新型インフルエンザと同等の扱いとなる。

監修:寺下 謙三(寺下医学事務所 代表)

参考

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