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「新型コロナウイルスに関連した感染症」情報
―新型コロナウイルス感染蔓延下のメンタルヘルスについて(精神科医コラム)―

2020年5月20日版

飯森 眞喜雄(いいもりこころの診療所院長・東京医科大学名誉教授)

日本も世界も新型コロナウイルス一色です。こうしたなか、感染への恐怖や漠とした不安に加え、自分が置かれた新たなストレスフルな状況によって、メンタルの不調を訴える方が精神科を受診するようになってきています。
こうしたストレス下では、①睡眠と栄養、②適度な運動、③他者との連携が大切になるのですが、それらがうまくいかず、いくつかの症状が出現してきます。そこで、実際に見られる主な症状と治療法について述べてみます。

1 恐怖と不安

目に見えないものや未知なものに対する恐怖や不安は誰しも抱きますが、それが治療薬のない感染性のものであるだけに増強されます。さらに、SNSやネットで飛び交う情報の過多は冷静さを失わせ混乱を生みます。これらが相まって、混んだ通勤電車や人混み、医療現場などで不安が増強し、息苦しさや動悸が発作的に起こる「パニック発作」が生じることがあります。過呼吸を呈することもあります。発作が繰り返し生じると「パニック障害」や「電車恐怖」「外出恐怖」となり、通勤や生活に支障が出てしまいます。こうした不安症状は「またなるのでないか?」という「予期不安」を生み、次いでその状況に置かれると自律神経が勝手に不安定になって発作が起こってしまうのです。不安症状は発作が生じるメカニズムを知り、医師のサポートを受けながら抗不安薬や一部の抗うつ薬の服用で軽快していきます。

2 うつ病と抑うつ状態

マスコミでは「コロナ鬱」という俗名が流行っていますが、これには①本来の「うつ病」、②「一時的な抑うつ状態」があります。ともに症状は重苦しく鬱陶しい気分、気力の低下、不眠や食欲低下などと共通しています。
①の場合は、職場のコロナ対策や家庭状況の変化に伴う疲弊によって引き起こされるもので、症状は一般的なうつ病と変わりがありません。②との違いは、何やっても楽しいという気分が湧かず気晴らしができないこと(「アンヘドニア」といいます)です。治療は休養と抗うつ薬によります。
②の場合は①よりはよく見られます。外出が制限された状況下で、感染を絶えず恐れていなくてはいけない状況、経済的心配、休校や在宅勤務で生活内容が変化したことによる心身の負担から生じる一時的反応です。気分は鬱陶しくなりますが、①のようにアンヘドニアに陥るということはなく、楽しいことがあれば気晴らしができます。もっとも困るのは、①よりもイライラ感が強まり不機嫌にもなることです。ここからDVに発展することが問題になっています。
これらには環境の改善が必要になりますが、主婦の場合には難しい状況があります。在宅勤務の夫も子どもも一日中家にいてイライラが強まるからです。互いに思い遣りつつ、家族の絆を確認していくことが大切になります。あまりイライラがひどかったり、不眠が出ていたりするような場合には精神科を受診してください。

3 不眠

不眠はもっとも見られるものです。寝つきが悪い、中途覚醒、早朝覚醒、悪夢があります。これらは上記の1、2でも生じますが、多くは日中の疲労や緊張状態が持続して交感神経の興奮が夜間になっても収まらず生じます。不眠はイライラ感や気分の鬱陶しさを増悪させるので、毎日続くようであれば精神科を受診してください。

4 孤独感

一人暮らしで外出が制限された生活を送らざるを得ない方にとって、孤独感は強いストレスになり、不安感や抑うつ気分を増悪させます。周囲の方との電話やメールなどを使った頻繁なやりとりが、ストレスを軽減させます。

5 イライラ感

2の抑うつ状態とは別に、イライラ感や不機嫌だけが特に強く出現するものです。2でも述べたような家庭環境や仕事環境の変化に伴うものです。自分なりの対処法を見つけることが必要になりますが、家族に害を及ぼしたり、自分でコントロールできないと自覚したりしたときは精神科医にご相談ください。

以上、新型コロナウイルス蔓延後に精神科臨床で見られる主な症状を列挙してみましたが、ご本人もご家族も困ったときには気安く精神科を受診してみてください。きっと楽になります。

保健同人社「新型コロナウイルス感染症 関連情報 特設サイト」
https://hkd-kateinoigaku.libra.jpn.com
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